2014 Fiscal Year Research-status Report
防衛体力からみた児童生徒における運動・スポーツの必要性
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25350857
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
鈴川 一宏 日本体育大学, 体育学部, 教授 (10307994)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 防衛体力 / 児童 / 生活習慣 / 運動習慣 / 唾液中SIgA濃度 / ヘモグロビン値 / 唾液中アミラーゼ濃度 / POMS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、児童生徒を対象として調査を行い、運動習慣や生活習慣が体力および健康に及ぼす影響について検討し、運動・スポーツの必要性を明らかにすることである。この目的に沿って、平成25年度には中高生を対象に防衛体力に関する調査を行った。そこで、平成26年度では中学生の調査の他に小学生についても防衛体力の調査を行った。なお、防衛体力に関する調査では、POMS、自覚症状調べ、唾液中SIgA濃度の分析を行うとともに、唾液中アミラーゼ濃度測定によるストレスの評価、そして貧血の評価として血中ヘモグロビン値(以下Hb)の測定を末梢血管モニタリング装置(アストリム;シスメックス社製)によって非侵襲的に行った。その結果、小学生の結果から以下のことが明らかになった。 1.睡眠習慣が確立されている子どもは、寝付きや寝起きの状況は良好であり、精神的ストレスは低値を示した。一方、食事・排便・運動習慣および健康意識について負の回答をする子どもは、高い自覚症状の訴えが認められた。 2.対象児童におけるHb推定値の平均は男子14.3±1.3g/dl、女子13.6±1.3g/dlであり貧血傾向を示す児童は男女とも多くはなかった。しかし、給食を残す女子においてはHbが低値を示す割合が高く、自覚症状との間に関連が認められた。 3.女子では唾液中SIgA濃度が低い子どもで昨年度1年間における欠席日数が多かったことが明らかになった。また、欠席日数が多い女子に室内遊びを好む子どもが多いことが認められた。 本研究の結果から、子どもの生活習慣は睡眠状況や朝食摂取状況および主観的な健康状況と関連していることが明らかになった。特に女子では男子よりも運動習慣が健康状況に影響を及ぼす可能性が強いことが考えられたことから、小学生における女子の運動習慣は防衛体力を向上させるためにも必要であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.防衛体力からみた児童生徒における運動・スポーツの必要性を明らかにするため、小学校で調査を行った。学校現場では調査の協力を得ることができ、体育の時間を利用することによって小学5、6年生の生活習慣に関するアンケート調査や防衛体力に関する測定について効率よく実施することができた。 2.調査項目として自作したアンケート用紙を用いて生活習慣と運動習慣について調査を行った。また、本年度は小学生についても健康感に関する調査、POMSによる疲労調査、そして唾液中のアミラーゼ濃度およびSIgA濃度測定によって、ストレスの評価および免疫能の評価を行った。また、ヘモグロビン値についても測定することができ、総合的に複数の指標から防衛体力について検討を行うことができた。 3.調査結果から、生活習慣では睡眠習慣が確立されている子どもでは寝付きや寝起きの状況が良好であり、精神的ストレスが低値を示していた。また、一方で食事・排便・運動習慣および健康意識について負の回答をする子どもでは、高い自覚症状の訴えを持つことが明らかになった。 4.健康に関わる生理的な指標として行った貧血の調査結果から、給食を残す女子においてヘモグロビン値が低値を示す割合が高く、自覚症状との間に関連が認められた。また、免疫能の指標である唾液中のSIgA濃度の結果からは、その値が低い女子児童では欠席日数が多いことが明らかになり、さらに欠席日数が多い女子に室内遊びが好きである子どもが多いことが認められた。したがって、小学生における防衛体力に対する運動の影響は、特に女子児童で顕著に表れる可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の結果から児童の防衛体力について考えた場合、子どもの頃の遊びは防衛体力にとって重要であることが考えられた。特に、女子児童では外遊びではなく室内遊びが好きな子は1年間における欠席日数が多いことが確認された。また、欠席日数が多い児童では唾液中SIgA濃度が低値を示していることから、外で遊べていない児童では免疫能が低下していることが推察された。また、睡眠習慣や生活習慣が確立されている児童では精神的ストレスが低値を示していた。日々の運動によってからだを動かすことが入眠時刻を早め、睡眠習慣や生活習慣の確立に繋がることからも、児童の運動習慣が防衛体力を向上させる可能性が示唆された。そこで、今後の研究として平成27年度は以下について検討を行う。 1.平成25年度に行った中学生・高校生の結果と平成26年度に行った小学生等の結果から児童生徒の防衛体力について、生活習慣および運動習慣から検討を行う。 2.防衛体力に及ぼす運動・スポーツの影響をより明らかにするため、さらにいくつかの学校について調査を行う。 3.学校現場で行われている体力テストを行動体力の評価として用い、行動体力と防衛体力との関連について検討を行う。これにより、一言で「体力」と表すことが多い行動体力と防衛体力に関連があるのか。そして、運動やスポーツによって行動体力が向上することが防衛体力の向上に繋がるのか明らかにすることができ、今後の研究に活かす資料になると期待する。 以上の様に、平成27年度は当初予定していたように、平成25年度および26年度に得られた結果から、児童生徒の防衛体力についてまとめを行う。また、平成27年度についても学校現場における調査を行うこととし、新体力テストの結果を合わせることによって運動の影響について防衛体力だけでなく、行動体力についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
1年を通し計画的に調査を行ってきたが、平成26年度の調査校が都内近郊の学校で調査することができたことから、当初の予定より旅費の出費を大幅に抑えることができた。したがって、昨年度の未使用額と合わせて289,088円余らす結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画当初では、平成27年度は2年間で得られた小学生から高校生までを対象としたデータについて解析を行い、防衛体力からみた運動とスポーツの必要性について検討し、その成果を報告する予定であった。しかし、平成26年度に余った289,088円を平成27年度に有効的に活用するため、さらにいくつかの学校について調査をすることとし、本年度の結果についても成果をまとめ経費を有効に活用する。
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Research Products
(3 results)