2013 Fiscal Year Research-status Report
規格外遺伝子とそのアウトレット制御に基づく新しい予防医学研究の展開
Project/Area Number |
25350887
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
原田 永勝 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40359914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / NMD / 飽和脂肪酸 / ライフスタイル / 運動 / 骨格筋 / PTC / アウトレット |
Research Abstract |
私たちの細胞で発現する2,000種以上ものナンセンス型mRNA(異所性に翻訳停止コドン=premature termination codon;PTCを有するmRNA)は生体恒常性に有害な『規格外遺伝子』としてmRNA品質管理機構(NMD機構)により常に分解されている。このため、NMD機構が阻害されると、ナンセンス型mRNAの発現が増加し、生体に悪影響を及ぼすと考えられる。本研究では、食生活やライフスタイル(運動など)がNMD機構およびナンセンス型mRNA発現量に与える影響を解析することで、生活習慣病の新しい発症機構とその予防メカニズムを明らかにすることを目的とした。6週齢のマウスを購入し、①通常飼料(対照)あるいは②高脂肪食(脂肪カロリー比50%)で6週間飼育した。また、通常飼料で飼育し、回転カゴにて自由運動を6週間させたマウス群を③群とした。飼育期間終了後にマウスの体重を測定し採血した。マウスから組織(肝臓および骨格筋)を採取しRNAおよびタンパク質を抽出した。選択的スプライシングによりナンセンス型mRNAを産生するマーカー遺伝子(Tmem183A, Nktrなど)について、ナンセンス型mRNAおよび総mRNAの発現量を定量的リアルタイムPCR法により解析した。ナンセンス型mRNA発現量/総mRNA発現量の比を算出し、NMD機能の指標とした。結果、②群では①群(対照群)に比べて体重の増加傾向が、③群では①群に比べて体重の減少傾向がみられた。②群の肝臓では一部のNMDマーカー遺伝子のナンセンス型mRNA発現量/総mRNA発現量の比の有意な増加が認められた。一方、今回の検討では、②群、③群において、骨格筋のmRNA比で有意な差はみられなかった。今年度の研究において、高脂肪食投与がマウス肝臓においてNMD機構およびナンセンス型mRNA発現量に影響を及ぼすことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の主な研究実施計画は、A:生活習慣病マウス(高脂肪食投与マウス)およびライフスタイル(運動負荷など)マウスの作製と評価、およびB:マウス組織におけるナンセンス型mRNA発現量(総mRNA発現量に対する発現割合)の解析であった。Aのライフスタイルマウスの作製では、第一選択として考えていた運動負荷マウスの作製を行い、その他のライフスタイルの影響として食事制限の検討を今後予定している。NMDマーカー遺伝子(ナンセンス型mRNA)の発現解析法が、当研究室において確立したこともあり、Bについては当初の研究計画通り解析が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食や運動がNMD機構に及ぼす影響を明らかにする。平成25年度の研究で標的とした組織(肝臓および骨格筋)を中心に、NMD機能を解析する。NMD因子(UpfあるいはSMGファミリー遺伝子)について、タンパク質発現量をウエスタンブロット法にて解析する。また、NMD機構を阻害すると報告されている細胞ストレス応答因子eIF2alpha分子のリン酸化の測定や、eIF2alphaシグナルに重要な小胞体ストレス応答の解析も重要である。変化のみられたタンパク質(遺伝子)については、培養細胞を用いた解析も行う。遺伝子発現プラスミドを利用する遺伝子過剰発現法や各種活性剤・阻害剤を用いてNMD機能の変化を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究においては、試薬やディスポ製品など無駄なく購入・使用することができ、研究費のロスを最小限に抑えることができた。次年度の研究計画では、研究進行状況に合わせて、各種遺伝子やタンパク質に対する活性剤や阻害剤の購入を新たに検討しており、それらの購入のための資金として、また、現有のタンパク質発現解析用ブロッティング装置が故障したこともあり、新規製品(およそ10万円)の購入用資金として次年度使用額とした。 翌年度分の研究費と合わせて、試薬類として、タンパク質発現解析用試薬(各種抗体含む)、細胞培養用試薬,発現プラスミド作成用試薬,細胞への遺伝子導入用試薬などの購入を予定している。その他、タンパク質発現解析用ブロッティング装置の他、実験用の各種消耗品(細胞培養ディッシュやウエスタンブロット用PVDFメンブレンなど)の購入を予定している。研究成果の進行に合わせて、各種遺伝子やタンパク質に対する活性剤や阻害剤の購入を検討する。
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