2014 Fiscal Year Research-status Report
規格外遺伝子とそのアウトレット制御に基づく新しい予防医学研究の展開
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25350887
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
原田 永勝 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (40359914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / 食事制限 / ナンセンスコドン依存性mRNA分解 / レポーター遺伝子 / 細胞ストレス / SCD1 / AMPK / ルシフェラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの細胞で発現する2,000種以上ものナンセンス型mRNA(異所性に翻訳停止コドンを有するmRNA)は生体恒常性に有害な『規格外遺伝子』としてmRNA品質管理機構(NMD機構)により常に分解されている。このため、NMD機構が阻害されると、ナンセンス型mRNAの発現が増加し、生体に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、食生活やライフスタイルがNMD機構およびナンセンス型mRNA発現量に与える影響を解析した。昨年度の研究で、マウスへの高脂肪食の給餌は肝臓におけるナンセンス型mRNA発現量(マーカー遺伝子を用いて測定)を増加させること、一方、運動は骨格筋におけるナンセンス型mRNA発現量に大きく影響しないことを明らかにした。今年度の研究では、ライフスタイルの新しいモデルとして、食事制限および絶食(ともに48時間)の検討を行い、これらがマウスの体重を減少させる一方、肝臓のナンセンス型mRNA発現量に有意な影響を与えないことを明らかにした。細胞ストレス応答因子eIF2αのリン酸化は、高脂肪食投与、食事制限、絶食のいずれにおいてもマウス肝臓で増加が認められた。一方、NMD機構の重要因子であるUPF1の発現量は食餌内容によって影響を受けなかった。細胞内エネルギーセンサーの一つであるAMPKの活性(リン酸化)の程度は高脂肪食給餌で大きく影響されなかったが、脂肪合成系遺伝子であり細胞ストレスとも関わりが深いSCD1の発現量は、高脂肪食で低下した。今回、ウミシイタケルシフェラーゼの発現に基づく外来性NMDレポーター遺伝子を用いて、SCD1阻害剤(A939572)のNMD機構への影響を解析した。結果、SCD1の阻害はNMD機構に有意な影響を及ぼさなかった。このことから、高脂肪食投与によるナンセンス型mRNA発現量の増加にAMPKやSCD1は大きく寄与しないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の主な研究実施計画は、(A)新しいライフスタイルモデルマウスの検討の追加、(B)ナンセンス型mRNA発現量に変化がみられた組織を中心としたNMD因子の発現解析、ストレス応答因子eIF2αのリン酸化解析、細胞ストレスと関わりが深いエネルギー代謝関連タンパク質の解析、および(C)培養細胞を用いたナンセンス型mRNA発現量の解析であった。Aでは、食事制限マウスや絶食マウスの検討を追加した。Bでは、それぞれの因子の発現量や活性についてウエスタンブロット法を中心に検討した。Cでは、SCD1阻害剤のNMD機構への影響を解析した。eIF2α(活性型および不活性型)遺伝子について、遺伝子導入のための発現プラスミドを構築し、次年度の解析に備えた。全体としておおむね研究計画通り解析が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食給餌や食事制限、絶食における小胞体ストレス反応を解析する。小胞体ストレスマーカーとなる遺伝子あるいはタンパク質の発現を定量的リアルタイムPCR法やウエスタンブロット法を用いて解析する。変化のみられたタンパク質(遺伝子)について、培養細胞を用いた解析も行う。各種遺伝子の発現プラスミドを構築し(eIF2α発現プラスミドは構築済み)、培養細胞に過剰発現させたときのナンセンス型mRNA発現量の変化を検討する。一方、本研究で用いたマーカー遺伝子以外のナンセンス型mRNAについて、NMD機構阻害時の発現変化を解析し、生活習慣病の形成と制御における役割について検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年3月に納品となった物品購入の額が、次年度使用額欄に記載されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「次年度使用額欄」の記載額の支払いは、当該年度(平成26年度)予算として平成27年4月に完了予定である。
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