2014 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のライフヒストリー分析による生涯発達過程での運動の意義と影響に関する研究
Project/Area Number |
25350895
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Research Institution | Hokusho University |
Principal Investigator |
小坂井 留美 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (20393168)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ライフヒストリー / ライフステージ / 運動経験 / 高齢者 / インタビュー調査 / 積雪寒冷地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,北海道の在宅高齢者を対象に,ライフヒストリーに関するインタビュー調査を行い,テキスト化したデータを定量的・定性的に分析して,運動実践の意義や人生での役割,心身機能との関連を明らかにすることを目的とする.今年度は,インタビュー調査の本調査に位置づけており,計画した人数のデータ習得とテキスト化を進めた.また,昨年度のデータについて定性的検討を行った. 1.本インタビュー調査:地域担当者より紹介を受けた80名(男性16名,女性64名)について調査を実施した.対象者の平均年齢(SD)は78.1(8.1)歳であった.SF-36のGH尺度,CES-D,MMSEの平均得点(SD)は,順に65.2(20.6),6.8(8.6),27.8(2.1)であり,うつ傾向11名,認知機能障害疑い3名を認めた.テキスト化した総インタビュー時間は4,687分であった.ライフステージ別運動実践では,総じて学校時代の体育授業・先生の語りはほとんどなく,成人期の職場での運動活動についての語りが多く聞かれた.背景に,学校時代が戦中・戦直後で体育が十分行われなかったこと,炭鉱の隆盛時に職場の余暇活動も盛んであった様子が伺われた. 2.高齢期までの運動継続とQOLとの関連:昨年度の調査から,運動経験が50年以上で,競技レベルで継続している1女性と運動経験は高齢期の数年のみ楽しみレベルで行った1女性の語りに着目し,運動継続の量と質と現在のQOLについて対比的に検討した.運動の実践/非実践が継続した要因として,生来的な気質・体質,支援者の存在などの関与が示唆された.長く高いレベルでの運動経験が現在の生きがいに繋がっている様子,高齢期に初めて体験した運動が,運動経験が全く無かったためより意義深く感じられている様子から,運動の継続期間や強度の多寡によらず運動が高齢期のQOLに貢献する可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,インタビュー調査の本調査に位置づけていたため,昨年度確定した調査方法に基づいてインタビューデータと心身状況データの取得を行った.その結果,1.予備調査対象者へのテキスト化した人生年表とインタビュー内容の返却,2.本調査対象者の獲得,3. 本調査およびテストラン,予備調査含め予定した100名のデータ取得とほぼテキスト化の完了,4.予備調査のインタビューデータを元にした,高齢期までの運動経験と現在のQOLについての定性的検討の論文化が実施できたため,おおむね順調に研究が進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本調査を主とした全データを用い,計画に示した1.ライフコースと運動経験との関連についての文脈に即した定性的検討をさらに進めること,2.ライフヒストリー中の運動に関連する用語等のデータマイニング,3. 運動とライフイベント,環境・文化要因および心身機能との関係について定量的検討を行っていく. 今年度は,予定した人数のデータ収集ができた一方,収集とテキスト化にかかる時間的負担は大きく,データの本格的な分析は次年度集中して行うこととなる.データの解釈やインタビュー内容の正確さや充実のため,インタビュースタッフとはデータ整理と分析内容について定期的に打ち合わせを重ね検討していく.さらに研究協力者との議論の機会を増やし,研究成果の発表を進める.
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Causes of Carryover |
主に,インタビューデータ取得が3月末までかかっており,収集したデータの一部について,テキスト化・データ整理費用の請求が4月に持ち越されていることによる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この分のテキスト化費用,データ整理スタッフ賃金の支払い請求は,4-5月にほぼ予定通り手続きが進んでおり,次年度の早い段階で支出は完了する.
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Research Products
(2 results)