2014 Fiscal Year Research-status Report
学習記憶機能におけるメラトニンの抗加齢効果に関する作用機序の解明
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25350903
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
千葉 篤彦 上智大学, 理工学部, 教授 (40207288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 隆 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00242082)
服部 淳彦 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (70183910)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メラトニン / 学習記憶 / 老化 / ニューロン新生 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、25年度に引き続きD-ガラクトース投与による亜急性老化モデルマウスと自然老化マウスとを用いて、加齢に伴う酸化ストレスの蓄積や空間記憶及び物体認識記憶の低下に対するメラトニンの抑制効果についてサンプル数を増やして詳細に調べた。海馬歯状回におけるニューロン新生は学習記憶機能と密接に関連すると考えられているが、25年度の我々の研究結果によれば、自然老化マウスではメラトニン長期投与のニューロン新生に対する有意な効果が観察されず、亜急性老化モデルマウスにおいてはむしろメラトニン投与群でニューロン新生が低下する、ということが示唆された。それにもかかわらず、どちらの老化マウスにおいてもメラトニンは加齢性の学習記憶機能の低下を抑制した。そこで、26年度は、空間記憶と関連の深い海馬歯状回と、物体認識記憶と関連の深い嗅周囲皮質について、ニューロン新生以外のいくつかの形態学的指標の加齢に伴う変化に注目し、それに対するメラトニンの抑制効果の有無について詳細に検討した。その結果、亜急性老化モデルマウスでも自然老化マウスでも海馬歯状回は老化に伴い体積が減少するが、メラトニン投与群ではその減少が抑制された。さらに神経細胞数の増加も観察され、この領域において溶媒投与対照群と比較してアポトーシスの減少やニューロン新生の増加がある可能性が示唆された。また嗅周囲皮質においては、神経細胞の密度には変化がなかったが細胞体のサイズの加齢う減少がメラトニンの投与により抑制されることがわかり、この領域においては樹状突起のは発達がメラトニンにより維持されている可能性が示唆された。これらの結果から、メラトニンの学習記憶機能に対する抗加齢効果には神経回路の維持を含めた様々なメカニズムが関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メラトニンによる加齢性の学習記憶機能の低下に対する抑制効果を検討するために、自然老化マウスとD-ガラクトース投与による亜急性老化モデルマウスのメラトニン投与群および溶媒投与対照群について、空間記憶や物体認識記憶に関連する海馬歯状回の体積や神経細胞数、嗅周囲皮質の神経細胞密度や細胞体の体積などの詳細な解析を行う必要性が出てきたため、この解析に予想以上に多くの時間を費やし、全体的な実験の進行に当初の計画よりも多少の遅れがでる結果となった。しかし、これらの解析から得られた知見は、学習記憶機能に対するメラトニンの抗加齢効果の作用機序の解明の一助となると思われる。また、自然老化マウスと亜急性老化モデルマウスとでほぼ同じ結果が得られたことから、メラトニンの学習記憶機能に対する抗加齢効果の研究において、亜急性老化モデルマウスの研究上の有用性が確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度からは主としてD-ガラクトース投与亜急性老化モデルマウスを用いて、メラトニン投与により発現量が変化する学習記憶機能に関連する遺伝子のマイクロアレイおよびreal-time PCR法による解析にとりかかりたい。また、これに関連して、メラトニンの学習記憶機能に関する急性効果についても検討する必要があると考えている。このようなメラトニンの急性効果として電気生理学的手法によって海馬スライス標本における長期増強の抑制効果は本研究課題の研究分担者である岡田らも報告している。また行動学的手法により逆行性記憶増強などもこれまでに報告されている。本研究では学習記憶機能の評価はメラトニン投与を中止して24時間以上経過してから行っているが、長期投与によるメラトニンの学習記憶機能に対する抗加齢効果をみる多くの先行研究では、メラトニンの投与を中止せずに学習記憶機能の評価を行っている。このような状況に鑑み、老化マウスにおけるメラトニンの学習記憶機能対する急性効果を検証することが、本研究課題の実験結果を評価する上でも重要であると考えられる。
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Research Products
(2 results)