2014 Fiscal Year Research-status Report
摂食促進ホルモン・グレリンによる自発運動量制御機構の解明
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25350914
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
満園 良一 久留米大学, 健康スポーツ科学センター, 教授 (20200058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御船 弘治 久留米大学, 久留米大学・医学部, 准教授 (70174117)
田尻 祐司 久留米大学, 久留米大学・医学部, 准教授 (80469361)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グレリン / グレリン遺伝子欠損マウス / 日内リズム / 自発運動 / 時限制限給餌 / 探索行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,グレリンの摂食・代謝リズムや自発運動量を制御するメカニズムおよび両者のクロストークにおけるグレリンの役割を明らかにすることを目的とし、平成26年度は「グレリンによる摂食リズムと自発運動量制御機構の解明」について以下の研究を実施した。 ①回転かご自発運動量,摂餌行動とグレリン動態の解析:a)回転かご自発運動量および摂餌行動;自由摂餌における野生型(WT)およびグレリンKOマウス(KO)の自発運動は、一日の間では主に暗期に認められ、WTの自発運動パターンは、暗期開始時後と暗期終了時前数時間の持続的な自発運動が主であり、その間に断続的な自発運動が散見されたが、KOでは、断続的な自発運動が暗期全体を通して生じる傾向にあった。両マウスを2週間時限給餌(2回/日;5~7時、19~21時)すると、WTの自発運動は制限給餌時刻に同調した自発運動が認められるようになり、暗期開始時刻後の運動量が著しく増大し、KOでは暗期開始時後の自発運動が明確に認められるようになったが、その後の断続的な自発運動は依然存在した。b)グレリン動態;自由摂餌のWTの血中グレリン濃度は、午前7時と午後7時に有意に上昇し、午後1時と午前1時に有意に減少する日内リズムが存在し、時限給餌後は制限給餌時刻においてのみ有意に高くなった。 ②自発運動および探索行動時のグレリンによる動機付け:グレリンagonist (GHRP-6)をKOマウスへ浸透圧ミニポンプを用い午前7時と午後7時に腹腔内投与すると、自由摂餌における投与前に認められた暗期全体を通しての断続的な自発運動は減少する傾向にあったが、午前7時と午後7時の時限給餌では、WTと同様の自発運動パターンが観察された。 以上の結果より、探索行動は暗期開始時刻後に生じることから、その動機付けには摂餌行動、明暗の光刺激以外にグレリンが関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度予定していた野生型(WT)マウスおよびグレリンKOマウスを用いた「グレリンによる摂食リズムと自発運動量制御機構の解明」については、①回転かご自発運動量,エネルギー代謝とグレリン動態の解析、②自発運動および探索行動時のグレリンによる動機付けなどを実施した。さらに、WTおよびKOマウスの2週間時限給餌期間の行動(記憶、弁別、空間認知など)をマウス用集団型全自動行動・記憶学習測定装置(IntelliCage)を用いた探索行動動機の解析については、現在進行中の動物実験であり、おおむね当初の研究計画通りに進展している。さらに、当初の予定に入れていなかった視交叉上核を追加サンプリングし、ニューロメジンUおよびS等の摂食抑制因子や時計遺伝子制御における自発運動量制御機構の解析も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25、26年度の研究結果より、摂食リズムや体内エネルギー代謝の日内リズムの恒常性の維持にグレリンが関与し、グレリン遺伝子欠損(KO)マウスでは日内リズムに関与する時計遺伝子の制御機構が破綻し、さらに、探索行動としての自発運動の動機付けには、摂餌行動や明暗の光刺激以外にグレリンが関与している可能性が示唆された。 以上の研究成果を踏まえ、今後は、自発運動の動機付けには摂餌行動、明暗の光刺激、グレリンなど以外の摂食抑制因子や時計遺伝子制御も研究視野に入れた自発運動量制御機構の解析を進めて行く予定である。また、グレリンKOマウスを用い、グレリンのagonist、antagonistなどによる介入や制限給餌パターン(制限摂餌時間、回数など)を変化させた自発運動の動機付けを検討し、摂食活動と自発運動が生体の明暗リズムへ及ぼす影響を探索する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施予定であったWTおよびKOマウスの2週間時限給餌期間の行動(記憶、弁別、空間認知など)をマウス用集団型全自動行動・記憶学習測定装置(IntelliCage)を用いた探索行動動機の解析において、自由摂餌におけるWTおよびKOマウスの回転かご自発運動量の経日変化と比較検討し、時限給餌後の自発運動量の変化と探索行動の動機時期について相関の有無を分析する予定であったが、本測定装置内での個々のマウスの自発運動量を測定することが不可能であることが判明し、当初の研究計画を一部変更し、本装置を用いたWTおよびKOマウスの2週間時限給餌期間の行動(記憶、弁別、空間認知など)解析のみを行うこととしたため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、「グレリンによる摂食リズムと自発運動量制御機構の解明」について以下の研究を実施する。 追加動物実験として、自発運動量制御機構における視交叉上核のニューロメジンUおよびSなどの摂食抑制因子や胃内の末梢時計遺伝子の関与を解析し、自発運動の動機付けへ及ぼす影響について、摂食活動、明暗リズムおよびグレリン以外の因子を多面的に探索する。また、臨床試験として、肥満者の食行動異常に対する運動習慣介入による効果を検討するため、肥満患者において規則正しい食生活や運動習慣に対する介入を厳密に行う事によるグレリンのリズム回復と共に、肥満の是正の有無を詳細に解析する。
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Research Products
(5 results)