2013 Fiscal Year Research-status Report
虐待が疑われる子供に認められるキズを客観的に評価する方法を確立する
Project/Area Number |
25350925
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高塚 尚和 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40242490)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 春夫 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30134919)
舟山 一寿 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80568486)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 児童虐待 / リニア型プローブエコー / 分光測色計 / 損傷 |
Research Abstract |
本研究では,リニア型プローブエコーおよび分光測色計を導入することにより,子供に認められる損傷を詳細かつ客観的に評価する方法を確立することを目指している。平成25年度は,この診断手技の基礎的な方法(データ)を確立することを目的として,司法解剖事案に認められた損傷(出血)をリニア型プローブエコーおよび分光測色計を用いて観察した。 まず,リニア型プローブエコーによる損傷(皮下出血)の観察が有効であるかどうか検討した。本教室にすでにある設置型エコーを用いて,司法解剖事例に認められた損傷(皮下出血)の観察を行ったところ,損傷の程度により,観察できる像に差は認められたが,外表から出血が確認された皮下出血にほぼ一致して,皮下軟部組織内には出血が疑われる像が確認され,リニア型プローブエコーによる観察が有効であることが確認された。しかし,出血の拡がりに関しては,肉眼所見と比較して一致しない,あるいは特定できないこともあり,これは,本研究代表者がエコーの取扱い関して極めて未熟であるため等と考えられ,今後,正確な診断を実施するためには,スキルの上達が極めて重要であると考えられる。 次に,分光測色計を用いて,司法解剖事例に認められた損傷(皮下出血)を観察し,色調を客観的に評価することを試みた。出血の色調の差を,デジタル化することは容易であったが,測色面積と損傷との大きさが一致せず,正常な皮膚の部分も,皮下出血の部位と同時に測色することや,皮下出血の色調が一様でないケースでの評価方法が課題となった。さらに,デジタル化した色を,他の事例と評価する際の課題として,対象物の温度により,特に赤緑方向の色調(a*)が大きく影響を受けることが判明したことから,温度による測色への影響を評価する必要があることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の観点から,やや遅れていると評価した。 (1)リニア型プローブエコーを導入することにより,ある程度,皮下軟部組織内の出血の拡がりを把握することは可能であるとの結論を得たが,出血の性状の詳細を把握することは困難であり,さらにエコーの取扱いに慣れる必要があり,スキルが向上しない限り,正確な診断が出来ないことがあきらかになった。 (2)分光測色計を用いた損傷(皮下出血)の観察では,損傷(出血)の色調をただ単純にデジタル化することは可能であったが,分光測色計の入口部の大きさと損傷(出血)の大きさとをいかにして一致させるのか,色調の代表性をいかに確保(評価)するのか,温度変化による影響をどのように評価するかが課題であることが判明した。 (3)司法解剖に事例では,対象物に動きがないことから,時間をかけてリニア型プローブエコー及び分光測色計を使用可能であるが,一般に子どもは落ち着きがなく,これまで実施してきた肉眼的観察でも,診察に困難を来すことが珍しくない。このような状況下で,肉眼観察のほか,エコー及び分光測色計による診断方法を導入することが可能であるかどうかを再度検討する必要があると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在の事項評価をもとに,今後の研究推進の方策について記載する。 (1)研究代表者のエコー診断のスキル,さらに実際,診断現場に応用する際の状況(条件)を加味すると,エコーと分光測色計による検査を同時に実施することは困難であると考えられる。次年度は,エコーによる検査は取りやめ,分光測色計による検査に絞る。 (2)分光測色計による検査では,出血の皮下軟部組織内への拡がりを評価することは困難であると考えられるが,測色の際に用いられる光線は思いのほか強く,皮下組織内にもある程度光線が到達しており,さらに,分光測色計が有するヘモグロビン・インデックスの機能を利用することにより,出血の強度および拡がりを評価できるのではと考えられる。それゆえ,ヘモグロビン・インデックスの信頼度を評価するため,病理組織学的検査を併用して,その有効性を検証する。 (3)分光測色計より得られる色の値の温度による影響は,標準色板を用いて,その温度を変化させることにより明らかにする。また,測色された色の値の代表性に関しては,損傷(出血)部位を,ある程度細分化して測色する等により検討する。 (4)実際に子どもの虐待が疑われる事例の診断を依頼された際,分光測色計を用いてその有用性を確認すると共に,子どもの反応もみて,導入可能か否かを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究概要並びに現在までの達成度の項目において記載したように,(1)肉眼観察のみでも子どもの診察に困難を極めることが稀ではないにもかかわらず,さらにリニア型プローブエコーによる検査と分光測色計による検査を同時に実施することは,現実的でないと考えられる,(2)分光測色計に付随するヘモグロビン・インデックスの機能の特性を考えると,ある程度,出血の量と深さを評価できるのではなかろうかと考えられる,との結論を年度途中に得た。それゆえ,平成25年度ではリニア型プローブの購入をひとまず凍結し,そのため次年度使用額が生じた。なお,分光測色計により測色された色の値が,温度の影響を受けることが年度途中に明らかになったため,赤外線サーモグラフィーを導入し,同時に温度測定を行うことにした。 分光測色計に付随するヘモグロビン・インデックスの機能を詳細に評価するため,ヘモグロビン・インデックスと病理組織学的所見とを比較・検討する必要が生じた。研究代表者が在籍する研究室には,光学顕微鏡がすでに設置されているが,この評価を実施するためには,病理組織標本を肉眼的に観察するのみでは十分でなく,コンピューターに画像を取り込んで,出血面積等をデジタル化して,ヘモグロビン・インデックスと比較する必要がある。しかし,当該研究室には光学顕微鏡から画像を取り込む装置がないことから,次年度使用額と,次年度に配布される予定の助成金とを合算して,光学顕微鏡用デジタルカメラとそれに伴う機器を購入する予定である。
|