2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350928
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
谷口 明子 東洋大学, 文学部, 教授 (80409391)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 病弱教育 / 院内学級 / キャリア発達 / 質的研究 / プログラム開発 |
Research Abstract |
特別支援教育においては,平成21年の特別支援学校学習指導要領の改訂において職業教育とキャリア教育の充実が要点として示されて以来,キャリア教育へ関心が向けられ,研究課題としても取り上げられるようになった。しかし、先行研究の多くは知的障害のある子ども対象のキャリア支援であり、病弱教育領域のキャリア発達支援を扱った研究は見当たらないのが現状である。病弱児は,協調性の低さ等の社会性の問題をはじめ,自立した適応的生活を送る上での独自の課題を有しているとされるが,キャリア発達支援を意識した教育プログラムは具体的に提案されていない。本研究は,病弱児の教育的環境として重要な意味を持つ院内学級におけるキャリア発達支援プログラム開発を目的とする。平成25年度は、次の研究活動を行った。 特別支援教育におけるキャリア教育に関する文献研究により、「キャリア教育」がいわゆる職業教育という狭い枠組みでとらえられるのではなく、発達過程における移行支援、ひいては地域生活を含めた生涯にわたる適応支援としてとらえることの重要性が明らかになった。 第二の研究として、病弱教育担当教員を主な対象として文部科学省から講師を招聘した講演会を開催し、「病弱教育におけるキャリア教育の現状と課題」に関する政策的な観点からの情報収集、および知識の普及に努めるとともに、病弱教育担当教師がキャリア発達支援に関してどのような力をつけたいと感じ、またどのようなことを支援上の課題と考えているのかに関する情報収集を行った。 さらに、当初計画では、次年度に予定されていた当事者のキャリア発達支援ニーズに関する調査研究にも着手し、2名の小児がん経験者(成人)にインタビュー調査を行った。 以上の研究成果は研修会講演を通して、病弱教育現場へフィードバックを行った。現在学会発表および論文執筆を準備中であり、次年度以降に公表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は以下の3つの研究目的を掲げ、従事してきた。 第一の研究目的は、キャリア教育に関する先行研究をレビューし,研究領域の理論的・制度的背景を整理することであった。キャリア教育に関する文科省答申や研究報告を辿り、病弱教育におけるキャリア教育のとらえ方に関して、従来の就業支援の枠組みにとらわれず、「移行支援」というとらえが適切であり、そのとらえに基づくキャリア発達支援の必要性が高いとの知見を得ることができた。 第二の研究目的は、病弱教育におけるキャリア発達支援の現状と支援内容について明らかにすることであった。全国病弱教育校長会資料により、平成24年度に校内研究として「キャリア教育」関連のテーマに取り組んだ学校が多数にのぼることが確認された。また、北は福島から南は沖縄まで病弱特別支援学校の研究紀要を収集したが、資料収集が思うように進まないこともあり、いまだ十分な内容分析には至っておらず、今後の課題として残っている。 第三の研究目的は、病弱教育担当教師対象の事例検討会を開き,キャリア発達支援に関する情報収集を行うことであった。教師への事前の聴き取りから、小児医療や教育政策の転換が著しい昨今の実情とキャリア発達支援とからめた講演を聴きたいとの現場ニーズが把握された。そのニーズを勘案し、平成25年9月に文部科学省より講師を招聘し、講演会を開催した(参加者64名)。講演内容を通して、病弱児支援をめぐる医療や教育政策に関する情報収集を行うことができた。また、講演時に教師対象アンケートを行い、病弱教育担当教師がキャリア発達支援に関するとらえについて情報を収集することができた。 さらに、データ収集に時間がかかることが想定されたため、次年度の研究目的である当事者のキャリア発達支援ニーズに関する調査研究にも着手し、2名の小児がん経験者(成人)にインタビュー調査による情報収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として以下の点を挙げる。 第一に、キャリア発達支援に関する文献研究および学会等における情報収集のさらなる展開である。平成25年度は国内の文献を主に検討してきたが、従来の枠組みにとらわれないより広い観点から本領域についての知見を得るために、平成26~27年度は海外におけるキャリア発達支援や病弱児に関する研究も検討していく。そのために、データベースを用いて海外における制度や研究論文を収集し、また、最新の情報を得るために、海外の学会へも積極的に参加し、情報収集を行う予定である。 第二の研究活動として、当事者のキャリア発達支援ニーズに関する情報収集を推進する。平成25年度には2名の小児がん経験者のインタビュー協力を得て、情報収集を行った。当事者へのインタビューは、情報提供者を得ることが難しいが、紹介等によりなるべく多くの協力者を得ることをめざす。プライバシー保護など倫理的配慮を十分に行いながら、少なくとも5名にインタビューを行い、病弱児のキャリア発達ニーズに関する情報を収集し、結果の質的分析に従事する予定である。 第三の研究活動として、院内学級担当教師を対象としたキャリア発達支援に関するインタビュー調査を開始する。まず、平成25年度に収集した情報をまとめ、論文として発表する。。また、すでに10年継続している病弱教育担当教師との研究会メンバーを中心に、フォーカス・グループインタビューを行うとともに、東京以外の道府県における病弱教育担当教師を対象とした個別の半構造化面接調査を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・以下4点の理由により、平成25年度使用額が当初予定よりも少なく、次年度使用となった。 ①学会が東京開催が多く、旅費の支出が想定よりもかなり少なかったこと。②平成25年度4月の勤務先異動により、海外等遠方出張を自発的に控えたこと。 ③新勤務先における図書購入について理解が不十分で、図書を購入しなかったこと。 ④インタビューテープおこしが、業者混雑のため当初予定よりも時間がかかり、次年度予算による支払になってしまったこと。および、成果物の仕上がりが遅れたため、専門的な知識の提供者への謝金支払いも次年度予算による支払となったこと。 ・平成26年度の繰り越し分を含めた使用計画は以下のとおりである。 ①海外における最新の研究に関する情報収集のため、海外学会出張2回を計画しており、うち1回について繰り越し分を使用する予定。 ②研究課題遂行に必要な洋書を含めた図書購入。 ③昨年度末から本年度にかけて行ったインタビュー謝金およびテープおこし支払に使用予定。 ④研究資料整理にアルバイトを雇用予定 ⑤沖縄・高知等において開催される国内学会における情報収集および成果発表。
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