2014 Fiscal Year Research-status Report
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25350928
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
谷口 明子 東洋大学, 文学部, 教授 (80409391)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 病弱教育 / 院内学級 / キャリア発達 / 質的研究 / プログラム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記したとおり、本研究は、病弱児の教育的環境として重要な意味を持つ院内学級におけるキャリア発達支援プログラム開発を目的として行われた。平成26年度は、次の研究活動を行った。 1.当事者のキャリア発達支援ニーズに関する研究として、新たに1名の母親にインタビュー調査を行い、平成25年度に行った2名の小児がん経験者(成人)へのインタビュー調査結果とともに逐語録化し、現在分析中である。特別支援学校卒業生については、学校ベースで蓄積された質問紙ベースのデータが存在することがわかり、現在データの活用可能性について確認中である。 2.院内学級担当教師の捉えたキャリア発達課題に関する研究活動としては、前年度行った質問紙調査データを分析し、学会発表および論文として公表した。院内学級におけるキャリア発達支援を扱った実証研究は皆無であり、貴重な成果を公表することができたと考えている。キャリア発達支援実践についての研究に関しては、2つの病院内教育機関における小学部~高等部までの支援実践に関する情報収集が継続中である。当初予定の面接調査ではないが、むしろ記憶に頼らないより詳細な指導案レベルのデータを収集できたことは大きな成果であった。 3.院内学級における病弱児対象の新たなキャリア発達支援プログラム開発研究として、東京都内大学病院内学級との共同研究体制が確立し、院内学級におけるキャリア発達支援プログラムとして、退院支援プログラム作成に着手することができた。現場との協働体制確立は大きな収穫であると考えている。さらに、海外の病院における退院支援プログラムに関する情報収集も行うことができ、プログラム開発への応用が期待できる。 以上の研究成果は学会発表6回、論文1本として公表し、かつ、研修会講演を通して病弱教育現場へフィードバックを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は以下の3つの研究目的を掲げ、従事してきた。 第一の研究目的は、当事者のキャリア発達支援ニーズを明らかにすることであった。一般にアクセスしにくい当事者2名より25年度に収集したインタビュー・データの分析にとりかかることができた。また、患児保護者からは、キャリア発達支援を考える際に入院中や退院直後の適応という視点のみならず、長く地域で生きていく上で病経験の位置づけを考える必要があることが明らかになり、従来の医療者や病弱関係者にはない新たな視点を得ることができた。 第二の研究目的は、院内学級担当教師を対象として,キャリア発達支援において「つけたい力」と支援実践内容について明らかにすることであった。前年度収集したデータをKJ法によって分析し直し、院内学級担当教師として子どもたちに「つけたい力」として11のカテゴリーの力が見出され、さらに大きくは「社会で他者とともに生きる力」「自分らしい人生を生きる力」「病とともに生きる力」の3つが相互に重複・関連しあいながら、潜在的な基盤として11の力に通底していることが明らかになった。昨年度進行が難しかった支援実践に関する情報として、40の実践についての指導案情報を収集することができた。 第三の研究目的は、院内学級における病弱児対象の新たなキャリア発達支援プログラム開発である。26年度は米国の小児病院における退院支援プログラムに関する情報収集の機会を得ることができ、本プログラム開発へ応用可能な貴重な情報を得ることができた。また、長年のフィールドワークの成果として、院内学級現場との協働による研究体制を確立できたことは大きな収穫であったと考えている。 以上より、次年度最終年度のまとめに向けて順調な進捗状況であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題最終年度である27年度の研究推進方策として以下の点を挙げる。 第一に、キャリア発達支援実践研究として、指導案の内容分析を行う。昨年度収集された40の実践事例に加え、本年度も現場との共同研究を継続することでさらに事例を増やす。「実践のねらい」「指導上の留意点としてどのようなことが挙げられているか」等の視点から事例の総括を行い、学会発表や論文としてのまとめ、研究成果の普及に取り組む予定である。 第二の研究活動として、当事者のキャリア発達支援ニーズに関する情報収集を推進する。26年度に達成できなかった特別支援学校卒業生データ収集については、依頼の道筋を明らかにすることができ、次年度研究への足がかりができたと思われる。27年度は収集したデータ分析を完了し、研究をまとめていく予定である。 第三には、院内学級における病弱児対象の新たなキャリア発達支援プログラム開発を、ある院内学級と共同研究を継続することで、ひとつの提案としてまとめる予定である。 以上の成果は27年度夏の学会発表および年度末に向けて論文として公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度の次年度繰越金として約10万円あるが、海外における情報収集を目的とした海外旅費のため、平成27年度分から30万円前倒し請求した分が、想定よりも航空運賃が安くあがり、余ったものである。本来的には26年度分は完全に執行されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前倒しにて使用済みの27年度分20万円分については、平成27年度は関東近県の開催が多く,国内旅費がさほどかからない見込みであること、及び,研究成果をまとめる際に必要と思われる図書資料類を購入済であり,平成27年度支出はごく少ない見込みであることから、研究遂行は予定通り行える見込みである。
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Research Products
(8 results)