2014 Fiscal Year Research-status Report
放射性物質によって汚染された幼稚園環境の回復に向けた活動と保護者連携
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25350939
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
岩倉 政城 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 名誉教授 (90005067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 敬 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (00343616)
小松 秀茂 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (30162051)
山崎 裕 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (40322656)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射能汚染 / 除染活動 / 自然との隔絶 / 保育 / 保護者 / 保育士 / 畑活動 / 現地調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度訪問した福島県内浜通り、中通り12園を再訪問しその後の放射能汚染状況と保育活動について調査した。加えて、浜通り2園、会津3園、宮城県内気仙沼地区1園、仙北2園を訪問し、他園との状況の違いを検討した。 福島県内の園では会津の1園と浜通り休園中の1園を除いて園敷地内除染を行っていた。その結果、文科省提示の追加汚染基準値0.23μSv/hを超す園は調査園中休園の1園のみであった。しかし、発ガンが統計学的に有意に増加すると認められる基準値年間1mSv、すなわち0.114μSv/hを上回る園が数園あった。 また、園敷地外の隣接地では基準値の数倍で、こうした環境下で保育が行われていることが判明した。その上、園庭や側溝など除染が比較的容易なエリアはともかく、樹木やその周囲、畑などは除染が困難で結果として伐採、畑活動の停止が目立った。結局福島県内調査園では畑活動は全く行われていなかった。部分的にプランター栽培が始まっていたが、その収穫物の喫食についても保護者の承認待ちであった。 園児への安全対策としては除染を筆頭に、砂場砂の入替、室内遊具の装備、飲料水の市販水化、頻回の園内清掃など多様であった。しかし中には園庭の土を覆った人工芝、園周囲の裸地をすべてコンクリートで塞ぐなど、土と隔絶した環境下で保育が行われている現状があり、自然との接点を失ったまま成長する子どもたちに対する長期的な支援の必要性が明らかであった。 この他保育者集団の疲弊と保育観の弱体化、保護者の分断やそれをつなぎとめる役割を園が果たすことなど多様な分析を行いながら研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共同研究者が同一大学内で保育の研究者1名、自然環境研究者1名、放射能環境汚染研究者1名、幼稚園長で保育現場を知る研究代表者の計4名である。そのため、それぞれの専門性を発揮して本研究に当たり、定期会合、合同調査隊の派遣を行って精力的に研究を進めてきた。 また研究協力者として福島をはじめとする東北各園の園長・教頭集団4名が随時この活動に加わり、臨時雇用学生によるデータ入力など、調査と記録・分析・学会発表が系統性を持って行える状況にある。 本年度5件、累積で10件の研究発表が行えたことがその証左と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
各園の果実、シロツメクサ、土壌など多量の測定サンプルがあり、これを高性能の放射線分析装置で測定しているため、時間コストが膨大で研究の進展にはなお長い経過を要する状況にある。 これらの実測値とリンクさせながら保育状況の改善等を時系列で解析する予定である。 原子力発電所事故という稀有な事象で生じた放射能汚染は乳幼児期保育活動に大きな影を落とした。この体験を科学的に解明記録する我々の研究成果は国内にとどまらず今後世界各国にとっても必要なものであろう。それを国際社会に公開する責務を感じている。今後海外規模で発信する上で研究資金の枯渇を愁いながら進めることとなり追加の出費を補う方策を努力している。
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Causes of Carryover |
分担し合っている研究者間で年度末の予算執行の相互確認が不十分であったため全額費消済みと思い、追加出費を停止したため、結果として一部残余金が出てしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旺盛な学会活動をしており予算額では関与研究者全員の出席費用が覚束ない状態にあった。次年度に研究発表活動、学会出張旅費等で迅速に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)