2013 Fiscal Year Research-status Report
保育・教育施設の音環境保全に向けた実態把握及び改善手法に関する研究
Project/Area Number |
25350947
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
上野 佳奈子 明治大学, 理工学部, 准教授 (10313107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉斗 綾子 千葉工業大学, 工学部, 助教 (80381458)
川井 敬二 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90284744)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 建築環境・設備 / 教育施設 / 保育園 / 音環境 |
Research Abstract |
本研究は「A.オープンプラン教室を対象とした調査」、「B.保育園を対象とした調査・実験」によって構成され、平成25年度は以下の項目について研究を実施した。 A.オープンプラン教室を対象とした調査:子どもたちの生活環境である学校建築の建替え前後における児童及び教師や保護者の状況を継続的に追跡調査し、閉鎖型教室からオープンプラン型教室への環境の変化が児童の心身の健康に与える効果や影響を捉えることを目的として、東京都江戸川区立第二葛西小学校(H26年に新校舎に移転)を対象として調査を行った。H25年度には、これまでに行った旧校舎及び仮設校舎における調査データをまとめるとともに、新校舎移転(H26年1月)後の児童の健康状況や生活習慣に関するアンケート調査を実施した。 B.保育園を対象とした調査・実験:実態調査により保育園の音環境の現状を示すとともに、保育施設の協力を得た現場実験によって改善手法及びその効果を示すことを目的として研究を進めた。H25年度には、規模・立地・運営形態・施設面において特徴の異なる6つの保育園の協力を得て調査を行い、室の響きや部屋の区切り方など室内音環境に関わる実態を視察するとともに、保育施設や音環境に関わる要望などについて園の代表者に対するヒアリングを行った。このうち2園において吸音材を設置して、設置前後に音響測定(残響時間、室内音環境等)、保育士に対する意識調査、子どもの活動状況の記録を行い、吸音の効果を物理面・心理面・行動面から調べた。また、他園において、吸音材設置の有無による英語の授業中の発声の変化を測定して吸音材の効果を示した。さらに、保育士を対象とした聴力検査を行ない、勤務前後の聴力の変化についてデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施項目である「A.オープンプラン教室を対象とした調査」、「B.保育園を対象とした調査・実験」の各項目について、以下に示す。 A.オープンプラン教室を対象とした調査:H25年度は、東京都江戸川区立第二葛西小学校(H26年に新校舎に移転)を対象とした調査を計画していた。当初の計画通り、H25年度3月に新校舎移転(H26年1月)後の児童の健康状況や生活習慣に関するアンケート調査を行った。当初計画していた児童へのアンケート及び建築音響測定については、対象校及び教育委員会との相談により、H26年度に行うことで調整を進めている。 B.保育園を対象とした調査・実験:H25年度は、特徴の異なる6園で実態調査を行った。また、3園において吸音材を保育室内に設置して、設置前後の測定・調査により吸音の効果を物理面・心理面・行動面から検証した。当初の計画では、吸音材設置実験については、保育園への協力依頼、吸音材を設置する室や取付方法の検討、試料の製作等の準備作業を行う計画としていたことから、吸音材設置と効果の検証を実施したことは当初計画以上の進展といえる。 以上を総合して、おおむね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続き、以下の研究を行う。 A.オープンプラン教室を対象とした調査:調査対象の第二葛西小学校について、移転直後(開校一年目)の調査を主として平成26年度に行う。調査の内容としては、①児童及び保護者に対する児童の健康状況や生活習慣に関するアンケート調査(平成25年度に実施済)、②児童及び教師に対する教室環境の評価アンケート調査、③教室の音環境の実測調査、④学習活動の実態観察調査を各年度に行い、各児童の心身の状況の変化や環境に対する評価を継続的に追跡する。最終年度には、個体識別をしたうえで調査対象となった児童の変化をまとめ環境変化と児童の心身の健康状況との関係を示す。 B.保育園を対象とした調査・実験:初年度に引き続き、調査協力が得られた保育園を対象に、保育室の実態把握と吸音実験を進める。また、吸音の効果による保育士の身体感覚的な差異を定量的に把握するために、実験室内に異なる吸音条件を模擬した音環境を再現し、保育士を対象とした主観評価実験を行う。音場再現の方法としては、高い臨場感を備えた音響空間が比較的簡易な方法で再生可能な6チャンネル音場再現システム(熊本大学に現有)を用いる。様々な吸音条件、騒音条件を短時間で切り替える実験室実験において、保育士の評価と音響条件との対応を示すことにより、現場実験で混入することが想定されるさまざまな要因の影響を排除した条件下で、音響的効果を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査において、調査対象の立地の関係上交通費支出が少なかったこと、吸音材設置実験における吸音試料の制作・設置において一部外注を取りやめ学生ボランティアによる作業としたことで研究費の使用が抑えられた。また今年度計画していた建築音響測定の一部を調整の結果次年度に行なうことになり、機材搬送費等が未使用となった。 平成26年度分として請求した助成金の当初計画における使用と合わせて、次年度使用額は平成25年度に計画していたうち未実施となった調査の交通費、測定実施時の機材搬送費・人件費等に使用する。
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Research Products
(7 results)