2014 Fiscal Year Research-status Report
新奇グアニン修飾アンチセンス核酸を利用したRNA構造・機能制御法の開発
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25350958
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
萩原 正規 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (40403000)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アンチセンス核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近我々は、RNA鎖中にグアニン四重鎖構造の誘起を達成する、アンチセンス核酸を設計することに成功した。本年度は、アンチセンス核酸の遺伝子発現への展開を試みた。mRNAの5’末端にはそれ自体はタンパク質には翻訳されない非翻訳領域(untranslated region: UTR)と呼ばれる塩基配列が存在し、遺伝子の翻訳過程に重要な機能を担っていると考えられている。データベース探索により、ガン抑制遺伝子として知られるMSH2遺伝子のmRNAの5’-UTR配列内部にグアニン四重鎖を形成する候補配列が確認できた。さらに本配列内の1つのグアニン塩基について一塩基変異多型(SNP)が存在することが分かった。 MSH2の5’-UTR内に存在するグアニン塩基に富む領域が四重鎖を形成することを酵素化学的手法により明らかにした。さらに、当領域のグアニン塩基のSNP変異により、グアニン四重鎖構造形成能が大幅に低下することを明らかにした。続いて、mRNAの5’-UTRに存在する四重鎖形成配列内のSNP変異による下流遺伝子の翻訳量の変化を調べるために、MSH2遺伝子、及びそのSNP変異体の5’-UTR配列下流にルシフェラーゼ遺伝子を融合した人工遺伝子を創製し、翻訳量の変化を解析した。 次に、グアニン修飾アンチセンス核酸により翻訳量を制御できるかどうかを検討した。MSH2の5’-UTRのSNP変異を含む領域に相補的な二重鎖形成能のみを有するアンチセンス核酸を設計し、遺伝子翻訳に対する影響を検討したが、遺伝子発現に対する影響は認められなかった。一方、グアニン修飾アンチセンス核酸では1 uMでほぼ完全に翻訳が抑制されることが分かった。本結果より、グアニン修飾アンチセンス核酸はRNA構造中に四重鎖構造を誘起することにより、非翻訳領域にもグアニン四重鎖構造を誘起することによりタンパク質への翻訳過程も阻害できることが明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度はRNAウイルスの複製を効果的に阻害するアンチセンス核酸の設計指針を確立することができた。本年度は、昨年度得られた実験結果をもとにグアニン修飾核酸のRNAからタンパク質への翻訳過程の人為的制御を目標に研究を行った。 mRNA配列中の非翻訳領域に形成されるグアニン四重鎖構造が遺伝子発現に重要な機能を有することが近年報告されている。本年度研究により、非翻訳領域中のグアニン塩基の一塩基多型がグアニン四重鎖形成に重要な役割を果たすこと、さらにアンチセンス核酸を利用してグアニン四重鎖形成を誘導することで一塩基多型により亢進した翻訳量を効率良く制御できることを明らかにした。 本研究により創成したアンチセンス核酸は、グアニン四重鎖を誘導するという機構により遺伝子発現を効果的に制御することができる非常にユニークなものである。本年度の研究結果は、想定した目標をおおむね達成できたものであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、本年度を通じてグアニン塩基が連続する領域に人為的にグアニン四重鎖を導入し、遺伝子の複製、翻訳過程を効果的に制御できることを明らかにした。来年度は、さらに効率良く遺伝子発現を制御できるようなアンチセンス分子へと展開していきたい。申請者は最近、連続するグアニン四重鎖構造がグアニン四重鎖ユニット間相互作用を通じて強力に安定な高次構造体を形成することを最近申請者は見出した。本構造体を人為的に制御出来れば、さらなるアンチセンス核酸の応用が可能となる。このような視点から、さらに高活性なアンチセンス核酸創成を目標として研究を展開していきたい。また、細胞実験への展開を視野に入れ、核酸分解性酵素耐性能を付与できるようなアンチセンス核酸の化学修飾法の開発研究にも挑戦したい。
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Causes of Carryover |
前年度記載したように、申請者が所属する施設では利用できない核酸の熱安定性を評価するシステムを購入した。キャンペーン中の商品購入ができたため、当初予算より若干の余裕ができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も今システムを利用して研究を行っていくが、消耗品(分光用のセル、光源)が高価なためその購入に充てたい。
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Research Products
(3 results)