2014 Fiscal Year Research-status Report
哺乳動物における植物内在性物質・ニコチアナミンによる鉄輸送の分子機構解明
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25350973
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, 研究員 (60256047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 康祐 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50414123)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄代謝 / ニコチアナミン / 小腸吸収 / トランスポーター / 植物性食物 / caco2細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ科植物の鉄キレート化合物、ムギネ酸類の前駆体であり、植物体内での鉄輸送に重要な働きをするニコチアナミン(NA)は植物性食物に多く含まれている。この植物由来のNAによる、哺乳動物における新しい鉄吸収機構を解明することを目指す。 ① マウス投与実験:マウスにNA 1mg (3.3 mM)/1 mlを経口投与し、投与後の血漿中のNAをF-MOC標識化してLC-MSで分析した結果、投与1時間後約8 μM、2時間後約4 μM、5時間後約3 μMのNAを検出した。この結果、経口投与したNAが血中に吸収され、2時間後以降減少し、各臓器に移動または排出されると考えられた。 ② 小腸吸収モデル細胞、caco2細胞でのアッセイ:caco2細胞をMillicell24ウエルセルカルチャープレートに培養し、そのアピカル側の培地にアスコルビン酸(1 mM)のみ, NA(1 mM)添加、NA(1 mM) +Fe(0.2 mM)添加、Fe(0.2 mM)添加の4群を各々投与後、37度CO2インキュベーターで72時間培養した細胞を回収して各々RNAを抽出した。このRNAをもとに次世代シークエンサーMiseqや定量PCR解析を行い、NAやNA+Feを添加することにより、RNA量の変動が大きな遺伝子を検出した。このうち、小腸に発現している数種類のSLCファミリー遺伝子を見出した。 ③ NAおよびNA-Fe錯体の質量分析(MS)での検出:小腸および各臓器でのNAおよびNA-Fe錯体のイメージングMSを行うために、MSによるNAおよびNA-Fe錯体合成品での検出を行った。条件検討の結果、マトリックスに3,6-Diaminoacridineを用いたMALDI-TOF MS(ネガティブモード)により、 NA の分子イオンピーク [M-H]-および [M-2H+Na]-, [M-2H+K]-を検出した。また、NA-Fe(II) 錯体の分子イオンピーク[M+Fe(II)-3H]- も検出した。この条件に基づきイメージングMS測定を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① マウスのNA投与実験では、血中でのNAの検出、定量に成功した。このことは経口投与したNAの一部が胃、腸で分解されることなく吸収され、血液を通して、各臓器に移動していることを示唆している。前年度でNA鉄錯体を投与したマウスの筋肉の鉄濃度が鉄だけ投与したマウスと比べて増加していることを報告したが、血液を通して、筋肉にNAおよびNA-Fe錯体が運ばれたのではないかと推測できた。 ② 小腸吸収モデル細胞、caco2細胞にNAおよびNA-Fe錯体を反応させてRNAを比較し、増減のある10数個のSLCファミリー遺伝子をトランスポーターの候補に挙げることができた。この候補遺伝子の輸送活性、発現局在を調べることにより、トランスポーターの同定に進めることができる。 ③ これまで、NAおよびNA-Fe錯体両方のMALDI-MSによる検出は難しかったが、マトリックスに3,6-Diaminoacridineを用いることにより、ネガティブモードでダイレクトにNAとその鉄錯体を検出することができた。今後、生体内での検出に有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はNAおよびNA-Fe錯体トランスポーターの同定を集中的に行う。
① 小腸吸収モデル細胞、caco2細胞にNAおよびNA-Fe錯体を反応させてRNAを比較し、SLCファミリー遺伝子をトランスポーターの候補に挙げることができた。これらトランスポーター候補遺伝子をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させてNAおよびNA-Fe錯体を輸送するか検証する。活性の認められた遺伝子に関してはcaco2細胞にRNAi遺伝子を導入してノックダウン細胞を作成し、活性の低下を確認する。 ② マウスNA投与実験では、血中と同様、各臓器のNAを定量する。特に前年度、NAを加えることで鉄濃度が増加した筋肉に注目する。 ③ これまでのNAおよびNA-Fe錯体のMALDI-TOFMSの測定方法を活かして、マウスにNAおよびNA-Fe錯体を投与後30分、1時間、2時間後の小腸や筋肉でのイメージングMSを行い、これらの吸収過程を観察する。 ④ NAの標識体の合成も同時に行い、マウスに経口投与し、腸およびオルガノイド内でのNAの挙動を蛍光in vivo Imaging System (IVIS)を用いて、鉄はアイソトープで観測することにより、その輸送、蓄積、代謝の解明を試みる。
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Research Products
(6 results)