2014 Fiscal Year Research-status Report
量子ドットを用いたAβ凝集阻害物質の微量ハイスループットスクリーニング法の開発
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25350974
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳樂 清孝 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00332106)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アミロイド / 凝集阻害 / アルツハイマー病 / シソ科 / 香辛料 / 海藻 / ロスマリン酸 / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に量子ドットナノプローブを用いたアミロイド凝集阻害物質の微量ハイスループットスクリーニング法(MSHTS法)を開発し、本手法を用いて香辛料52種類のエタノール抽出物のアミロイドβ(Aβ)凝集阻害活性を評価したところ、シソ科に属すハーブ系香辛料が高い凝集阻害活性を示すこと、そしてその活性本体がロスマリン酸であることが明らかとなった(Ishigaki et al., 2013)。 そこで本年度は、まずMSHTS法により香辛料以外のシソ科植物を評価した。その結果、シソ科紫蘇(Perilla frutescens)が著しく高い凝集阻害活性を有することが明らかとなった。そのため、紫蘇抽出物に関しアミロイド凝集阻害物質として特許出願(平成26年12月26日)すると共に、活性本体の探索を開始した。 次に、MSHTS法を用い、北海道近海に生息する海藻類11種類についてAβ凝集阻害活性を評価した。その結果、解析した海藻のエタノール抽出物の全てが凝集阻害活性を有することが明らかとなったが、その活性はシソ科香辛料で活性が最も高かったスペアミントの数百倍程度低かった。さらに、海藻の熱水抽出物についてAβ凝集阻害活性を評価したところ、スペアミントと同程度の高い凝集阻害活性を示すこと、またAβ凝集体の形態に影響を与えることが明らかとなった。海藻の熱水抽出物が粘性を示したことから、海藻に含まれる多糖類がAβ凝集阻害活性や、凝集体の形態に影響を与える可能性が示唆された。そこで、多糖類をエタノール沈殿により除去した上清のAβ凝集阻害活性を評価した。その結果、Aβ凝集阻害活性が低下し、さらに凝集体の形態に与える影響も見られなくなったことから、海藻の熱水抽出物に含まれる多糖類がAβ凝集阻害活性や凝集体の形態に影響することが明らかとなった(Ogara et al., 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、初年度(平成25年度)にスクリーニング法を完成させ、本年度(平成26年度)は実際に本手法を用いAβ凝集阻害物質の網羅的スクリーニングに取り組んだ。その結果、研究成果も着実に出始めており、これまでの成果について、完結した部分に関しては既に学術専門誌および特許としてまとめることができた。今後、さらにスクリーニングに関する未発表の成果についても順次発表していく予定であり、おおむね研究計画通り順調に研究が進展していると考えている。 また、シソ科紫蘇が高い凝集阻害活性を有することが明らかとなったことおよび本件に関して特許出願したことについては、平成27年4月16日付けの北海道新聞の記事として紙面およびオンライン上で公表された。研究試料を提供していただいた北海道白糠郡白糠町の町長とも新聞報道をきっかけに面談が実施され、今後、さらに共同研究を発展させていく方針が決定した。また、一般市民からも研究成果に関する問い合わせを受けている。以上のことより、研究成果の社会・国民への発信という観点についても、本研究は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、シソ科紫蘇のAβ凝集阻害活性が非常に高いことが明らかとなったため、まずは学会発表や論文発表に先がけて特許出願を行った。現在、活性本体の単離や構造決定、また細胞レベルでのAβ毒性緩和能について評価を進めており、今後、その成果を含めて学会発表や論文発表を順次進めて行く予定である。その後の動物実験については、現在、Boston University School of Medicineの池津教授と共同研究することで話を進めており、準備が整い次第研究を開始する。 MSHTS法による海藻類の評価により、これまでAβ凝集阻害物質としては殆ど注目されてきてこなかった多糖類が凝集に影響する可能性が新たに明らかとなった。そこで、多糖類のポリマーとしての性質が凝集に影響するのか、それとも多糖類を形成しているある特殊な単糖類が凝集に影響しているのか解析を進める予定である。 また、最近約500種類の植物抽出物のライブラリーを提供頂き、これらに含まれる抽出物についてMSHTS法を用いて解析を開始した。このような膨大な数のサンプルを対象としてAβ凝集阻害活性を評価した研究はこれまでなく、植物分類ごとのAβ凝集阻害活性を比較することで、今後より効率的に凝集阻害物質の探索が可能になることが期待される。
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Causes of Carryover |
消耗品および旅費について、計画と実際の価格の差額が生じたために、若干の残金があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] 海藻抽出物のAβ凝集阻害効果2015
Author(s)
高橋倫人、大柄俊貴、安井肇、上井幸司、徳楽清孝
Organizer
日本海水学会若手会第6回学生研究発表会
Place of Presentation
登別グランドホテル(北海道・登別)
Year and Date
2015-03-09 – 2015-03-10
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