2013 Fiscal Year Research-status Report
オリゴデンドロサイト-軸索連関による活動電位の軸索伝導変化の量子的解析
Project/Area Number |
25350986
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山崎 良彦 山形大学, 医学部, 准教授 (10361247)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 活動電位 / 海馬 / 髄鞘 |
Research Abstract |
今年度は、まず生後4~5週齢のラットを用い、海馬采側に伸びる軸索と海馬台側に伸びる軸索の潜時差分布を調べた。ヒストグラムを作成して分布を調べたところ、海馬采側では、0.33、0.69、0.95ミリ秒に、海馬台側では、0.22、0.45、0.68ミリ秒に、それぞれ分布のピークがみられた。また、オリゴデンドロサイトをDAB発色にて染色し、絞輪間距離を反映すると考えられる髄鞘形成突起の長さを測定してそのヒストグラムを作成したところ、海馬采側では、36.5、52.8、84.1 μmに分布のピークがみられた。海馬台側では軸索の分岐が多いため、軸索分岐点間距離を求めて絞輪間距離を推定したところ、37.5、86.6、138.3 μmに分布のピークがみられた。パラメーターがピークを持つ分布様式を示したので、量子的な解析に用いることができると考えられた。さらに、オリゴデンドロサイト/髄鞘-軸索間の相互作用について調べるために、以下の2つの事項について検討した。 1.生後7~8週齢ラットからの活動電位潜時差の分布。 2.生後4~5週齢のラット軸索における、アデノシン受容体関連薬投与による活動電位潜時差分布の変化。 1については海馬采側での記録を行ったが、生後4~5週齢のラットに比べ、潜時差分布のピーク値が短縮していることがわかった。2については、アデノシンA1受容体刺激薬・阻害薬、アデノシントランスポーター阻害薬を用いて、海馬采側での変化を調べたところ、アデノシンA1受容体の活性化によって、潜時差分布が右方向にシフトしていることがみられた。これらのことから、活動電位の軸索伝導を量子的解析によって評価可能であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間では、主に以下の事項を研究計画としてあげている。 1.生後2・3・4週および8週齢のラットにおける潜時差分布と絞輪間距離の測定・算出。2.海馬采に向かう軸索と、海馬台に伸びる軸索における、それぞれの潜時差の量子的分布。3.神経伝達物質投与および条件刺激により伝導速度変化が生じたときの活動電位潜時差の分布変化。4.虚血負荷時の活動電位潜時差の分布と絞輪間距離の測定。 1については、今年度、生後4週および8週齢ラットでの検討を行い、両者間に差異があることを見出した。2については、今年度の研究で結果が得られている。3においては、アデノシンおよびアデノシンA1受容体の関与についての検討により、潜時差分布に変化が生じることを観察した。さらにその変化が、絞輪部での変化によるものなのか、オリゴデンドロサイトによる変化なのかを調べるべく、次のステップに進むことができた。これらのことから、研究進捗状況としては、順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度と同様の実験手法を用い、髄鞘形成が未熟であると考えられる生後2・3週齢ラットでの検討を行う。この時期では、オリゴデンドロサイトの分化・成熟の程度もこれまで使用してきたラットとは異なると考えられるので、オリゴデンドロサイト染色の際、オリゴデンドロサイト分化の各段階におけるマーカー(O1, O4, NG2, CNPase, MBPなど)に対する抗体染色も合わせて行う予定である。また、生後4週齢ラットにおいて、海馬采側軸索と海馬台側軸索との間で潜時差や絞輪間距離に違いがあることがわかったので、個体発達の各段階におけるこれらの差異についても検討していく。 神経伝達物質・およびその受容体刺激による軸索伝導修飾効果については、これまでアデノシン関連の検討をおこなってきたが、オリゴデンドロサイトにアデノシン受容体が発現しており、その活性化が今年度観察された変化の機序になっている可能性ある。そのため、オリゴデンドロサイトにおけるアデノシン投与による変化についても調べることとする。他の神経伝達物質としては、予備的実験で伝導速度を遅延させることがわかっているセロトニン系について検討する。また、近年アセチルコリン受容体の関与も報告されているので、コリン系についても検討を加える予定である。 虚血負荷時の活動電位潜時差の分布と絞輪間距離の測定については、最終年度(平成27年度)に行う予定である。
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Research Products
(4 results)