2015 Fiscal Year Research-status Report
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25350993
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯高 哲也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324366)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ユーモア / 感情 / 前頭前野 / 海馬 / 脳賦活 |
Outline of Annual Research Achievements |
感情の中でもポジティブな要素、特にユーモア感情の脳内表現について健常被験者を対象として研究した。実験1では8分間のコメディ映画を見ている時に、場面の面白さの程度を4段階で判断させた(n=21)。同時にfMRIを用いて脳活動を計測し、各被験者の評定と相関する領域をSPM8を用いて解析した。対照実験として別の被験者群において、同じ映画のモザイク画面を見ている時の脳活動を計測した(n=20)。解析の結果では内側前頭前野、海馬、後頭葉などの領域が、映画を見た群で対照群より有意に強く賦活された。実験2では、同じ映画を見ている時の脳活動をfMRIで計測した(n=15)。被験者はボタン押しを含め、一切の反応はしていない。次に映画を見ながら、スクロールによる面白さの評定を行った。脳画像解析は、被験者間相関(Intersubject correlation : ISC)解析を用いて行った。この手法は、自然な視聴覚刺激を与えた時の解析に有効性が高いとされている。その結果では前頭葉、側頭葉、後頭葉など広範な領域のISCが亢進していた。次いでスクロールにより計測された、連続的評定を全被験者で平均した。平均値の変化を従属変数とし、各脳領域のISCの変化を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果、おもしろさ評定の変化が17個の領域におけるISCの変化で説明できた。その中に実験1の結果と一致する領域として内側前頭葉、海馬、後頭葉が含まれていた。実験1と実験2は異なった解析手法を用いたが、共通してこの3領域がユーモア感情に関連していた。内側前頭前野は画面に映る人物の表情や動作から、人物の心理を推測する働きを持つことが示唆された。海馬はユーモアの理論研究を参照すると、パンチ・ライン前後での文脈変化を統合する働きがあると考えられた。後頭葉はユーモア場面における、視覚的注意の亢進と関連すると考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユーモア感情の脳内基盤に関して2つのfMRI実験を行い、それぞれにおいて新奇な知見を得た。実験1と実験2の結果で共通して抽出された脳領域が、ユーモア感情に密接に関連する領域であると推察した。その結果について国内外での学会発表を行い、さらに英語論文としてまとめることができた。英語論文に関しては、現在は投稿準備中である。実験遂行、データ解析、結果の考察、成果発表など一連の研究計画は終了しており、おおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
同じ研究手法を用いて他の感情領域、例えば恐怖や悲しみを誘発する映画を見ている時の脳活動を計測したいと考えている。また今回得られた結果の中で、内側前頭前野領域の脳活動に注目している。この領域は前額部に位置しており、比較的表面に近い。従ってfMRIを用いなくとも、光トポグラフィーのような簡便な手法で反応を計測することが可能である。このような手法により、さらに自然な形で計測された感情の脳内基盤の研究へと発展させたい。
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Causes of Carryover |
今年度内の論文発表を目指して執筆を行っていたが、残念ながら受理には至らなかった。最終的に次年度内での成果発表(英語論文)となる可能性が高く、そのための投稿料またはオープン・アクセスのための費用が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英文専門誌への投稿が受理された場合に、投稿料として約15万円が必要になる。そのための費用として用いる予定である。投稿料の不要な雑誌の場合には、オープン・アクセスのための費用に充てる。さらに残額は、成果発表又は情報収集のための国内旅費に充てる。
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