2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350996
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
戸田 春男 新潟大学, 医歯学系, 講師 (10217507)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷川 久 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (40373328)
中原 潔 高知工科大学, 総合研究所, 教授 (50372363)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ラット形態視 / 皮質脳波 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、麻酔下のラットに様々な形態視刺激を行いながら、後頭皮質から側頭皮質までに至る広い領域から64チャネルの皮質脳波を同時記録。形態視刺激は四つのカテゴリ(ラット顔、ラット身体、人工物、建物)からなる計80毎の白黒画像であり、画面の明るさの変化や空間周波数の違いによる視覚領の活動への影響をなくすため、すべての画像の平均輝度と空間周波数のスペクトル分布を一致させてある。さらに、刺激画像を提示する直前に刺激画像に位相スクランブルを施した画像を提示し、その際の脳活動をベースラインとして、刺激画像提示時の脳活動を評価した。 その結果、側頭皮質の中の嗅周皮質近傍において、皮質脳波の中でもデルタ波およびシータ波と呼ばれる比較的低周波の信号が刺激画像に起因する変動を示し、その値は統計的に有意であることがわかった。これはラット側頭に形態視領域が存在することを示唆する新たな知見であり、現在共同研究者とともに結果を取りまとめている段階である。 また、光遺伝学的な手法により脳活動への介入を行うための最適条件を探るため、アデノ随伴ウイルスベクタを用いてチャネルロドプシンを遺伝子導入したラットの視覚領において皮質脳波を記録すると同時に様々な周波数での光刺激を行い、皮質深部から皮質表面への信号の伝搬、および皮質表面間の信号伝搬の周波数特性を検討した。その結果、皮質深部から皮質表面に至る過程で高い周波数の信号が減衰し、同時に皮質内部で生成されたと考えられるベータ波ないしローガンマ波成分が現れること、これらの信号が皮質表面を伝わっていく過程では周波数特性が変化しないことを見出した。この結果は生物系および工学系の国内学会で発表し、現在論文投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、本年度および前年度の研究から、皮質脳波の中でもデルタ波およびシータ波と呼ばれる比較的低周波の信号が刺激画像に起因する変動を示し、その値は統計的に有意であることを見出した。これはラット側頭に形態視領域が存在することを示唆する新たな知見であるが、本研究が最終的に目指す顔領域の存在を証明するためには必要条件にすぎず、また、動物個体間での部位のばらつきを現在のところ満足できるほどコントロールしきれていない。一方、光遺伝学的刺激実験の結果から、アルファ帯域からローガンマ帯域での刺激により、局所的な皮質回路の動員がなされることがわかり、顔領域での刺激パラメタを決定する根拠が得られた。以上を総合して「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によってラット形態視領域の最有力候補は側頭皮質であると考えられる。現在のところ十分満足できる結果が得られていないのは、(a)皮質脳波法の空間解像度では拾えないほど特定の形態に応答する細胞集団が小さいか、(b)麻酔の影響によるものだという可能性が考えられる。そこで、研究計画書にあるように、(1)側頭皮質におけるニューロン記録実験、(2)慢性電極を埋め込んだ頭部固定動物による覚醒下での皮質脳波記録実験に移行することを考える。同時に(3)側頭領域における光刺激を行い、形態を視覚的に弁別する能力が影響を受けるか確認する。そのため、多数のニューロン活動を効率良く記録するための刺入型多連電極の購入および現有の頭部固定装置の改良を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
ラット顔領域の候補となる部位は概ね推定できたものの、特定にまではいたっていない。次年度の効率的な研究のためには刺入型多連電極によるニューロン活動の記録と頭部固定による覚醒下での記録が必要であると考えた。刺入型多連電極は高価な輸入品で、また頭部固定装置の改良にもかなりの出費が見込まれる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用の消耗品(動物、動物資料、薬品に加えNeruoNexus社の刺入型多連電極(単価100千円)を6本程度購入する)および、小原製作所による頭部固定装置の改良に400千円程度を用いる。
|