2015 Fiscal Year Annual Research Report
脳損傷後の運動機能回復の基盤となる分子・解剖レベル変化
Project/Area Number |
25351004
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
肥後 範行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (80357839)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 霊長類モデル / 神経可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体マカクザル(ニホンザルまたはアカゲザル)を対象とし、把握課題を用いた上肢運動訓練を行った。核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging, MRI)を用いて頭部の解剖画像を撮像し大脳皮質第一次運動野の位置を同定した後皮質内微小刺激を行い、第一次運動野の機能地図を調べる。その後、手運動の支配領域にイボテン酸を注入し不可逆的に破壊する。その後に把握運動課題を用いたリハビリ訓練を行った結果、約1ヶ月のリハビリ訓練で手指の巧緻運動の回復が生じた。精密把握の回復の背景にある神経回路・投射の変化の詳細を同定するため、解剖学的トレーサーを用いた解剖学的解析を行った。ビオチン化デキストランアミン (Biotin Dextran Amine:BDA)を運動前野腹側部に注入し、1か月後に解剖して染色したところ、運動前野腹側部から発し、皮質下、あるいは反対半球に向かっている線維が同定された。運動野損傷後精密把握の回復を示した個体の出力線維終末の分布を健常個体と比較した。ほとんどの領域で、出力線維終末の分布は健常個体と損傷個体で一致していたが、小脳核、特に室頂核では損傷個体のみで運動前野腹側部からの出力線維終末が見られた。3頭の損傷個体すべてで、損傷側の小脳核に運動前野腹側部からの終末が確認された一方で、健常個体では私たちのサンプルでも、先行研究でも、運動前野腹側部から小脳核への投射は確認できなかった。このことから、回復過程で運動前野腹側から小脳核への投射が形成された可能性が考えられる。量的な変化は赤核など他の投射でも生じていた。第一次運動野の損傷により、皮質脊髄路を介した伝達に障害を受けるが、運動前野腹側部から小脳核や赤核などの運動神経核への投射が形成されることにより、第一次運動野を介さない運動出力の伝達が可能になった可能性がある。
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Research Products
(1 results)