2014 Fiscal Year Research-status Report
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25360004
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡邉 一哉 山形大学, 農学部, 准教授 (80406892)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 沿岸生資源利用 / タイ国バンドン湾 / 沿岸資源開発 / カキ・ハイガイ |
Outline of Annual Research Achievements |
バンドン湾の二枚貝養殖(特にカキ・ハイガイ)の起源年は、本研究の一連の調査によって1960年(カキ)、1980~83年(ハイガイ)が明らかとなった。その一方で、何故その時期に生態資源利用が開始されたのかが不明なままであった。26年度は、これまでバンドン湾を中心とした社会科学調査に加え、タイ国の沿岸資源利用史を歴史環境学的視座から整理し直すという大きな試みを実施した。その結果、1950年代から始まる東南アジア諸国のEEZ(排他的経済水域)の制定に端を発することを発見する。制度・政策による住民の移動、生業転換の推進が基底となっていたことが明らかになった。カキの生態資源利用は個人による云わば“偶然”が存在したが、その発生は時期こそ違いがあっても必然的に起こりえたと考えられる。ハイガイについては、さらに隣国マレーシアの存在が明らかとなった。マレーシアはハイガイの大生産地であり、その起源は1930年代であることが本研究の調査で明らかになった。マレーシアのハイガイ生産者は、自身の土地の開発拡大だけでなく、隣国タイへの資源移植を積極的に行い、稚貝の輸出による利益と、成貝の逆購入によってマレー本国内での価格差による利益という複数の利益を持続的に得るというシステムを確立した。これにより、マレー国内の直接管理地のオーバーシュートが抑制されている可能性が示された。著者らは、この「資源預託」による発展と持続的資源利用の可能性に強く着目している。 現在、26年度の成果を中心に国際誌に投稿すべく論文を作成中である。
27年度は、先に述べた可能性の検証を進めると共に、ここ数年頻発する洪水被害とその対処についてバンドン湾での社会科学調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進展としては当初の予定以上に新たな発見が続き、進行していると考えている。その一方で、タイ国内の社会情勢の影響により、当初の予定通りの調査スケジュール(渡航)をこなすことが出来なかった。同じ理由により、現地の研究協力者との協働も予定通りとは行かなかった。仮に予定通りにスケジュールをこなしていたならば、更なる発展があったものと思われる。
以上より、本年度の達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたるH27年度は、これまでの研究調査で発掘された情報ソースを整理し、論文化することを目的とする。そのために、昨年度に繰り越した経費を有効に使用し、本研究の帰結を目指すと共に、更なる発展方向を明確にする。
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Causes of Carryover |
H26年度に起きたタイ国内の政情不安により、当初予定していた時期の渡航(特に2014年前期)を実施できなかった。これに伴う旅費・現地支出予定費が残額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は最終年度であるため、調査補助員を同行するなどマンパワーを上げて調査する予定である。残額はその渡航費などの経費に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)