2014 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム戦争のオーラル・ヒストリーと「戦争の記憶」に関する複合的研究
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25360006
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院綜合国際学研究院, 教授 (20203284)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベトナム現代史 / ベトナム地域研究 / ベトナム戦争 / 戦争の記憶 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、ベトナム国内でのベトナム戦争の記憶に関する聞き取り調査を実施し、それに基づいて聞き取り資料を作成し、報告書にまとめていくのを任務としている。平成26年度は2回のベトナム国内での聞き取り調査を行なった。第1回目は、7月5日~7月27日にハノイ市とホーチミン市で実施した。ハノイ市では本研究のベトナム側受け入れ機関となったハノイ人文社会科学大学ベトナム学センターと研究についての打ち合わせと諸手続きを行なった。ホーチミン市では、同市の元青年突撃隊隊員会の斡旋で、元隊員8人(全員女性)にインタビューした。北部の青年突撃隊と比べて、同市の青年突撃隊は次のような特徴があることがわかった。①多数、多様、長期。②カンボジア戦争にも参加。③大きな農場建設にも参加。同市郊外のクチ県で行なった調査では、当地の解放区では独自の通貨がなく、サイゴン政権の通貨を使っていたほか、北部からニセ通貨を運び込んでいた。米は現地で調達し、武器はサイゴン政府軍兵士から購入することもあったという。ハノイ市では退役軍人会の活動が活発であるが、ホーチミン市ではそうではなく、むしろ抑えられている面があり、退役軍人をめぐっては複雑な面があることが窺えた。 第2回目は、平成27年1月4日~12日にハノイ市で実施した。第2回目の主たる対象は、旧ハノイ総合大学の学徒出陣兵である。今回は、自然科学系の元学徒出陣兵6人にインタビューした。北部では1970年~72年に学徒兵が動員されるようになり、それは学部を問わず動員されたことがわかった。第二次大戦の時の日本と比べると、文理の区別があまりなかったようである。次回は人文社会科学系の学徒兵についてインタビューしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベトナム国内での聞き取り調査とその文字資料化は順調に進んでいるが、平成26年度はベトナム戦争の記憶を扱った問題作として有名なホアン・ミン・トゥオンの小説『神々の時代』の翻訳に時間がとられ、聞き取り調査を報告書にまとめることができなかった。そのかわり、同小説の翻訳は年度内に終えることができ、同作品の翻訳は今後の日本におけるベトナム戦争の理解に大いに資するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の聞き取り調査は、旧ハノイ総合大学での学徒出陣の聞き取りを続行し、聞き取り調査の空白地域となっている南中部のビンディン省か中部高原、特区がおかれていたクアンニン省での聞き取り調査をすすめていきたい。 すでに調査・文字資料化済のものについては、資料集として編纂作業をすすめるほか、最低でも1年に2本は論文・研究ノートとして、まとめていきたい。
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Causes of Carryover |
物品費は主に資料の購入を予定していたが、旅費が予想より多くなってしまったため、手控えてしまったのと、伝単のコレクションが思いのほか高価であったので、今年度の購入をあきらめ、次年度に回すことにしたため。 謝金等は、聞き取り調査資料集の編集のために20万円を予定していたが、今年度は資料集編集にまで手が回らなかったので、次年度に回すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費については、伝単を購入するほか、書籍の購入にあてる。 謝金等については、聞き取り資料集の編集に着手し、そのために謝金を使用していきたい。
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