2016 Fiscal Year Annual Research Report
Dual studies on Oral History of Vietnam War and Memories of Vietnam War in Vietnam
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25360006
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20203284)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベトナム戦争 / 戦争の記憶 / オーラル・ヒストリー / 中越戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である平成28年度は、「知識人と戦争の記憶」を中心に研究をおこなった。具体的には、申請者がかつて留学していたことがあるハノイ総合大学(現ハノイ人文社会科学大学とハノイ自然科学大学)などの「学徒出陣兵」経験者と文学者へのインタビューを試みた。前者では、2016年8月に3人にインタビューすることができた。このインタビューにより、ベトナム戦争中における北ベトナムでの「学徒出陣」は1970年頃から活発になったこと、文系・理系の区別があまりなかったこと、訓練期間が短くて戦場に投入されたことなどが分かった。また後者では、作家のホアン・ミン・トゥオン氏、詩人のファム・ドゥック氏、作家のチン・ディン・コイ氏にインタビューした。印象的であったのはコイ氏で、氏の家系は科挙合格者を輩出した名家で、そのため革命後は「履歴が悪い」とされてしまった。コイ氏はその履歴を変えるために、成績優秀であったにもかかわらず、大学に進学せず、高卒で志願して出征したという。「履歴の悪い」人々にとって、戦争で兵士になることは名誉回復のよい手段であったという。 上記の調査とともに、平成28年度は、中越戦争の記憶についても調査した。これは、ベトナム国内で多く語られる「ベトナム戦争の記憶」とあまり語られない「中越戦争の記憶」を対照して考察するためである。6月には「戦争と社会主義のメモリースケープ」研究会で「ベトナムにおける社会主義国間の連帯と軋轢の歴史 -中越戦争の記憶・語りを中心にして」と題し、研究発表した。7月には、1984年の中越戦争の激戦地であったハーザン省ヴィスエンに行き、ヴィスエン戦線記念館および同県烈士共同墓地を見学した。 年末には、ドイモイ以降のベトナムにおける、ベトナム戦争の傷跡と戦争の記憶についてまとめた論文を執筆した。
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