2013 Fiscal Year Research-status Report
国家統治拡大と跨境少数民族の生活経験の変化-タイと中国のラフ族の比較研究
Project/Area Number |
25360008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西本 陽一 金沢大学, 人間科学系, 教授 (00362012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移動 / 少数民族 / ラフ族 / 国家 / タイ / 中国 |
Research Abstract |
東南アジア大陸部北部から中国西南地方にかけて居住・移動してきた少数民族は、当該地域の変容と諸国家による近代国家建設と辺境地域への支配拡大の中で、その生活は大きく影響を受け、変わってきた。その結果、現在では、国家状況の違いによって、同じ民族であっても、驚くほど異なった状況と生活経験が見られる。 本研究は、国境を跨いで居住する少数民族を対象としたフィールドワークを実施し、地域の再編成と近代国家建設の中で、跨境民族がいかなる生活変化を経験し、社会変化をどう受容し、また対応してきたかを、タイおよび中国の国家コンテクストの中で比較検討する。タイ語や漢語などの優勢言語でなく、民族語による丁寧な聞き取りを通して、住民の視点にできるだけ近づいた形で、跨境周辺民族の生活経験の理解を試みる。 本研究は、「跨境民族の生活経験の変化」というテーマについて、(1)対象地域の社会空間の変化およびタイと中国の統治拡大の過程の検討、(2)タイおよび中国における各時代の少数民族住民の生活変化の経験についての比較研究、(3)少数民族住民による自らの過去についての語りに反映される周辺民族の社会的経験の検討の3課題を軸に進められるものである。 平成25年度においては、フィールドワークの面では、タイ国に渡航し、タイの伝統派およびキリスト教徒ラフ族の宗教と宗教経験に関するデータを収集した。具体的には、伝統派ラフ族村落の祭祀空間についてさらなるデータを加えるとともに、キリスト教徒ラフ族の日曜礼拝と教会落成式を取材した。いずれも、仏教国タイで非仏教徒として暮らす集団の生活経験に関わるデータである。 成果公表の面では中国のラフ族を対象にして、かつて国家権力に対抗するほど大きな力を持っていたラフ族の仏教中心地について現状を報告し、宗教的節制について考察する英語発表を国際学会で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィールドワークの面では、タイ調査により貴重なデータが得られたものの、勤務先の仕事との兼ね合いで、短期間の調査しかできなかった。 成果発表の面では、国際学会で発表した英語論文を書き直し専門雑誌に投稿したが、年度内に公刊するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、昨年度に変わって、中国のラフ族を中心としたフィールドワークを実施する。 また、成果発表の面では、昨年度内には間に合わなかった英語論文を公刊する。さらに、タイと中国のキリスト教徒ラフ族を比較検討し、ホスト国家の宗教と異なる宗教を持つ人々の生活経験について考察した英語発表(国際タイ学会)と英語論文の公刊をおこなう。
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