2014 Fiscal Year Research-status Report
トナカイ放牧と自然保全の持続可能な関係:エヴェンキ人のローカルナレッジの再評価
Project/Area Number |
25360013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
思 沁夫 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任准教授 (40452445)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エヴェンキ人 / ローカルナレッジ / 生態環境 / 伝統文化 / 学際的アプローチ / スタノヴォイ山脈 / レナー川上流域 |
Outline of Annual Research Achievements |
中央シベリア高原のエヴェンキ人は、社会・生活の画一化を迫る市場化の流れの中で、いかに自然環境を保全しつつトナカイ放牧を継続できるのかという課題に直面している。これまで、エヴェンキ人のトナカイ放牧に関する知識は、帝政ロシア時代以降、ロシア語に翻訳され、蓄積されてきた。これに対して本研究では、以下のことを目的としてきた。①エヴェンキ人のトナカイ放牧に関するローカルナレッジをエヴェンキ語による人類学的調査によって再構築する。②エヴェンキ人の内在的な自然理解に基づくトナカイ放牧の実践を理解することで、彼ら がどのように持続可能な生存基盤を構築してきたのかを再評価する。以上を目的としたこれまでの主な研究成果は以下の通りである。 ・現地調査および現地資料収集作業は計画通りに実行している。 ・研究成果は中国語、ロシア語、英語、日本語など多言語で書籍出版、翻訳が進められ、いくつかの国際会議の場でその成果が公表されてきただけでなく、エヴェンキ語およびロシア語のホームページを開設し、研究内容や成果を発信した。 ・現地で収集されたデータおよび分析を重ね、大阪大学大学院生対象の開講科目『環境問題への回路Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』の教材として研究成果を一部活用している。 ・主に科研を通じた研究業績が認められた結果、サンクトペテルブルグ大学の特任研究者に選任されたほか、中国エヴェンキ研究会の名誉会長に選出された。 ・ローカルナレッジの研究が方法論として確立されてゆくことで、基盤Cから国際高等研究所共同代表へ発展したほか、GLOCOL企画の中国・雲南省における環境保護教育、実践活動に貢献している。 ・ローカルナレッジに関する理論的研究、現地調査に基づく実証的研究を推進、様々な形でローカルナレッジを再評価した結果、地域文化保護、継承や普及活動に成果が見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査および現地での資料収集、現地研究者との協力関係が順調に進んだ。これまでの文献および現地調査で入手したデータの分析、論文執筆、書籍出版、社会発信などが当初の計画以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
既往研究論文や資料の検討および現地入手データ分析をさらに進め、論文執筆、学会や国際会議での研究発表を行う。最終年度として、ロシアにて国際会議を開催し、ロシア側の研究者と意見交換、交流を進め、エヴェンキ地域やロシア社会に対する研究成果の発信を進める。 これまで冬および春の調査があまりできながったことを補うため、現地研究協力者に依頼し、データ収集を試みる。また、研究現地調査データを共同研究成果として発表し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
調査予定時期に温暖化現象が発生、暖冬で積雪が非常に少なかったため、調査成果が期待できないと判断し、調査予定時期の延期を決断した。この期間、既往研究を再検討し、論文執筆を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の計画を実行し、昨年度分の未使用金は補助調査、会議の規模拡大、現地におけるデータ資料収集に使用する計画である。
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