2016 Fiscal Year Annual Research Report
The influence of dementia care on family relations: The care burden and the cohesion of the extended family in Mexico
Project/Area Number |
25360017
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
松岡 広子 愛知県立大学, 看護学部, 准教授 (60249274)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メキシコ / 認知症 / 高齢者 / 介護 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会保障制度が貧弱な開発途上国では拡大家族間の助け合いが重要である。本研究は認知症介護が拡大家族の凝集性にどのような影響を与えるのかをメキシコにおいて明らかにすることを目的とした。補助期間中、現地で認知症の患者家族会や認知症デイサービスを利用する家族介護者に質問紙調査を実施して、最終年度はその成果の一部を学会にて報告して、論文にまとめて投稿した。 追加的データを取得して再検討した結果の概要は以下の通りである。主介護者の年齢、性別、患者との続柄、就労状況、学歴、主観的経済状況、利用中の介護サービス、患者の年齢、認知症の診断名、要介護期間、日常生活動作、認知症の行動・心理症状といった項目と、拡大家族間の凝集性の変化との関連について、統計学的分析では明確な結果は得られなかった。ただし、半数以上の患者の拡大家族において、認知症介護が遠方在住の家族との関係にまで何らかの影響を及ぼしていた。家族の凝集性についての自由記述回答を分析した結果、認知症患者を取り巻く、病前の家族の多様な関係性が明らかとなった。例えば、血縁関係があっても交流がなければそもそも家族関係の変化が認識されない。また、病前から患者と険悪な関係にあったり、患者に負い目を感じるような関係にあったり、そのような多様な関係が病後の家族関係に影響していた。また、介護の負担が自分に集中していることに不満を表明する主介護者が多かった。これらの結果は、メキシコの拡大家族に関する従来の印象を覆すものである。 認知症介護は病前の家族の関係性を本質的に変化させるものではなく、その特徴を表面化させるに過ぎないかもしれない。その点において、家族の歴史が重要である。また、認知症介護は拡大家族間の助け合いの対象になりにくい。それは子育てや一時的な金銭援助とは異なり、改善しない退行性を伴い、長期にわたる精神的・経済的負担を強いるからだろう。
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