2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25360019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
平体 由美 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (90275107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 直子 富山大学, 人文学部, 准教授 (00303199)
松原 宏之 横浜国立大学, その他の研究科, 准教授 (00334615)
山岸 敬和 南山大学, 外国語学部, 准教授 (00454405)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 医療史 / 政治史 / 専門家権力 / 国民化 / 医療制度 |
Research Abstract |
本プロジェクトの目的は、複数の学問領域にわたる研究者との共同研究を通して、20世紀アメリカ医療史を社会史、制度史、政治史の分野から検討することである。 25年度は7月に20世紀初頭イギリス公衆衛生史の専門家を、12月に19世紀末から20世紀にかけての中国医療史を専門としている講師を招聘し、合同研究会を開催した。アメリカ史の分野において議論の根幹となる移民や人種を元にしたアプローチや、医療の制度化をめぐる抵抗を、より複合的に見ていくための視点を得ることとなった。 それぞれの研究としては、研究チームのうち2名が資料収集のためにアメリカの研究機関と公文書館に滞在した。また全員が、これまでの研究から得られた知見を整理し、アメリカ医療史研究に接合するための基礎文献の読み込みを行った。 合同研究会、および個人的な情報交換や議論を通して、当初想定していた、国民としてあるべき「身体」をいかにコントロールするかの問題とともに、「科学」および「専門家」がどのように社会において足場を固めていったかについての議論を深めていく必要があることで一致した。科学のポリティクスについてはすでに様々な分野で検討が始められているが、我々としては(1)社会はなぜ国民化へむけた規律化を支持するのみならず積極的に求めたのか、(2)その際に専門家はどのように議論に説得力を持たせたのか、(3)科学はアメリカの文脈の中で独特の位置を占めたのか、占めたとしたらそれは他国とどのように違うのか、について考察を続けることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は当初の予定通り、講師を招いての合同研究会(2回)、各参加者による出版・オンライン資料の収集、アメリカ合衆国における一次資料の収集(平体、小野)を行なった。 合同研究会はアジア医療史研究会(ASSHM)の助言を得て、専修大学の永島剛教授(イギリス公衆衛生史)、および青山学院大学の飯島渉教授(近代中国感染症史)をお招きし、それぞれの分野における研究の特徴と問題点を紹介していただいた。京都産業大学の上野継義教授も参加、アメリカ産業衛生史研究の立場から、人種・エスニシティ論に基づくミドルクラス論に流れがちな議論に、経済史の視点を導入することの重要性を助言していただいた。 一次資料収集のための海外出張としては、平体が合衆国国立公文書館(College Park, Maryland) においてロックフェラー国際衛生委員会の初期資料と公衆衛生局との協力関係を示す資料を調査した。また小野がアメリカ医療史資料館(Bethesda, Maryland)において生殖医療の発展および「望まれる子供」に関する言説分析のための基礎資料を収集した。 また、研究代表者・分担者ともに、年々充実していくオンライン・データベース情報を共有し、関連の分野における医療関係の最新の研究動向を調査した。 初年度として予定していた、関連分野の情報収集およびチームとしての方向性の確定について、順調に進展していることを報告するものとする。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の個人としての研究および合同研究会を通じて、我々は「国民として望ましい身体」の複雑さを改めて認識したとともに、20世紀初頭における「科学」と「専門家」の立ち位置の問題を検討する必要を見いだした。 科学のポリティクスについては、STSをはじめとしてすでに様々な分野で検討が始められている。それを参考にしながら、我々は政治史、政治学、社会史の立場から、様々な歴史的経緯、政治的配慮、社会的事象を考察に加えた複合的な見解を提示しうることで一致した。具体的なトピックとしては、1.社会はなぜ国民化へむけた規律化を支持するのみならず積極的に求めたのか、2.その際に専門家はどのように議論に説得力を持たせたのか、3.科学はアメリカの文脈の中で独特の位置を占めたのか、占めたとしたらそれは他国とどのように違うのか、について考察を続けることとなったことについては、先に述べた通りである。 26年度は、上の問題意識を念頭に置いた上で、それぞれの調査研究を遂行する。松原と山岸はアメリカにおける調査旅行を予定している。平体と小野は前年度収集した資料の分析を進めるとともに、次年度の学会報告にむけてシンセサイズを行う。報告先学会としては西洋史学会と社会経済史学会を想定し、部会提案を行う。そのために7月と12月に合同研究会を開催し、四人の研究のすり合わせを行うとともに、他分野(看護史、精神保健福祉史を予定)の専門家を講師として招くこととしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
合同研究会に関連しての備品費、会場使用料などが、当初予定よりも安い施設を借りることができたため、使用額が少なくなった。また、講師としてお招きした先生の旅費が、こちらの当初見積額よりも安くなった。 講師の先生をお呼びするにあたり、今年度はメンバーの誰も面識のない方にお願いしたいと考えている。そのため、その方が発表なさる学会年次大会に参加するなどの旅費に使用する予定である。 また、資料整理のためにアルバイトを雇用するため、その人件費として使用する。
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Research Products
(7 results)