2013 Fiscal Year Research-status Report
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25360025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 百合子 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (10409815)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人身取引対策 / 人身取引被害者支援 / 社会再統合 / 被害当事者のセルフグループ / メコン流域諸国地域の人身取引 / 人身取引における日タイ関係 |
Research Abstract |
本研究はアセアンの人身取引対策、とくに人身取引被害者支援および防止に注目した国際協力に関する研究である。平成25年度は、(1)日本・タイ間の性的搾取型人身取引事例の分析、(2)タイにおける人身取引に関する国際協力の第1次調査、(3)人身取引研究会の実施が研究の目的であった。この3点についての以下述べる。 (1)アセアンにおける人身取引対策研究の先行調査として、日本とタイ間の性的搾取型人身取引および被害者支援、対策の事例の分析をまず行った。この分析は日本での人身取引対策の批判的検討として“Human Trafficking and Civic Engagement-Critical review of Anti-Trafficking measures in Japan”を2013年8月にタイ国チェンマイで実施された日本タイ学会において口頭発表した。 (2)アセアンにおける人身取引に関する国際協力の第1次調査は2013年8月にタイにおいて実施した。この調査の成果は、人身取引対策の中でも主に被害者の社会再統合課題に焦点を絞り、支援者の役割および被害当事者によるセルフグループ形成における課題のほか、人身取引対策における日本政府とタイ政府の二国間協力の考察が可能となったことである。 (3)人身取引研究会は2014年2月に、日本とアメリカにおいて人身取引被害者支援の実績があり、ミャンマーにおける人身取引対策の国際協力の現場での研修講師の経験がある専門家を招き、多様な人身取引形態(性的搾取、労働搾取)と多様な被害者(ジェンダー、年齢、学歴、出身国など)の支援について研究会を実施した。この研究会は今後も継続し、被害当事者の視点を取り入れた中長期の被害者支援モデルを構築していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的、および平成25年度の計画の3項目は、研究実績にも記したようにおおむね順調に進んでいる。しかし、当初計画していた日本における人身取引事例の分析についてうまく進捗することができなかった。その理由は、まず日本側の弁護士ら関係者への調査の調整がうまくできなかったことに加え、日本への就労斡旋や渡航準備をした人身取引加害者に対する被害者側からの民事裁判の判決がでたことで状況が大きく動き、その内容の把握と分析は平成26年度も引き続き行わなければならない事態となっている。加えて、タイ側の政治情勢は平成25年度秋頃から不穏になってきて調査がままならなかったことも理由のひとつに挙げることができる。 また、平成25年度に開催した研究会の回数は決して当初予定していたおおよそ3か月に一回の回数をこなすことができなかった。しかし、2014年2月に実施した、人身取引に関する研究会では、人身取引被害者支援の経験が長い専門家からの専門的知識の供与を受けたことは、被害者中心の社会再統合、具体的には被害者の自立支援もしくは生活再建支援について実践的な教訓を多く含むものであり、本研究がめざす被害当事者の視点を取り入れた中長期の被害者支援モデルを構築に大きく寄与するものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実施計画は、(1)タイとミャンマー間の労働搾取型人身取引事例分析(第2次タイ調査)、(2)カンボジア、ベトナムにおける移住労働と国際結婚に関する新たな形態の人身取引の研究、(3) アセアンにおける人身取引対策および関連施策の研究、(4)研究会の継続を申請当時は考えていた。 しかし、平成25年度から継続すべき研究課題と併せて、以下のように研究実施計画の内容を整理統合したい。 (1) 日本におけるタイの人身取引事例から教訓を得るための拡大研究会(もしくはシンポジウム)を日本かタイにおいて開催する。これについてはタイの政治状況にも十分配慮する必要がある。 (2) メコン流域諸国の主にタイ、カンボジア、ミャンマー、ベトナムにおいて、性搾取、労働搾取、業者仲介の国際結婚などさまざまな形態で発生している人身取引を整理し、メコン流域諸国およびそれ以外のアセアン地域における官民および国際機関の人身取引対策を分析し課題を抽出する。調査方法は資料および文献による調査とメコン流域諸国地域は現地調査を予定している。 (3) 研究会では、日本における人身取引対策の経験とそれをどのようにアセアンという地域の枠組みに寄与できるかを焦点とした論文集を制作したい。可能であれば出版も検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度(平成25年度)の研究者への直接経費予算額は60万円であったが、執行額は416423円だったので、183577円が次年度に繰り越された。 その要因は、研究会で年間3名分の講師謝礼費用を確保していたにも関わらず、1名のみの支払いになったことのほか、 旅費を国内調査分をとっておくべきところをすべて外国旅費と計画書に記してしまったため、海外調査の旅費分があまり、国内調査の旅費が不足する事態となっていまった。 平成25年度の次年度の繰り越し分と合わせ、平成26年は次の使用を計画している。 第一に、事例研究とした拡大研究会を実施するための国内旅費(東京と名古屋往復4人分と宿泊、講師謝礼等)としたい。第二に、タイ、カンボジア、ベトナム、ミャンマーの海外調査費用、そして第三の費用として研究論文集を編纂する際の謝礼等に使用する計画である。
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Research Products
(5 results)