2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25360025
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 百合子 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (10409815)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人身取引 / 人身取引対策 / アセアン / 被害者支援 / 再統合 / タイ / ミャンマー / メコン地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアセアンの人身取引対策、とくに人身取引被害者支援および防止に注目した国際協力に関する研究である。平成26年度は、(1)日本をはじめアセアンで共通する諸国若年層の防止と被害者の社会再統合の循環を可能とする人身取引対策の分析、(2)メコン流域諸国開発におけるベトナム~カンボジア~タイ~ミャンマーに至る地域での経済発展とともに派生する移住労働と人身取引の研究、(3)アセアン地域で人身取引対策を実施する国際協力の日本とオーストラリアの国際協力の比較分析を行うことができた。 (1)日本をはじめアセアンで共通する若年層の防止と被害者の社会再統合の循環を可能とする人身取引対策の分析では、有識者を迎えての研究会実施および調査研究により次のことが明らかになった。アセアン経済統合(AEC)が徐々に進み経済発展と格差が拡大するアセアンにおいて人身取引分野で共通する課題は若年層の都市部への移住労働と人身取引の防止であること、そして過去に人身取引被害当事者が社会再統合を実現する過程で人身取引防止にも寄与することが可能な事例を調査により発見し、被害者の再統合と人身取引防止の循環的な関連を分析することができた。 (2)メコン流域諸国開発における南南回廊と呼ばれるベトナム~カンボジア~タイ~ミャンマーに至る地域での経済発展とともに派生する移住労働の実態と人身取引の関係を、タイ・カンボジア国境のトラード県の国境で活動を実施するNGOや、タイ東部地域の人身取引の実態を警察や農家などからヒアリングを行い、情報を収集した。 (3)アセアン地域で人身取引対策事業を実施する国際協力に関して、国レベルでは日本とオーストラリアの二か国の比較分析、国際機関のUN-ACT、国際NGOのヒアリング調査をミャンマーやタイで実施し、資料とともに比較分析することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、アセアンにおける人身取引被害者支援および防止に注目した人身取引対策の国際協力に寄与する目的をもつ。その目的を達成するために、平成26年度は、(1)タイとミャンマー間の労働搾取型人身取引事例分析、(2)カンボジア、ベトナムにおける移住労働と国際結婚に関する新たな形態の人身取引の研究、(3) アセアンにおける人身取引対策および関連施策の研究、(4)研究会の継続を計画していた。 平成26年度は、ベトナムやカンボジアでの現地調査を実施することはできなかったが、タイにおけるカンボジア国境、ラオス国境、およびミャンマーの現地調査を通して、移住労働に伴って発生しがちな人身取引の形態を、労働搾取型(漁業、水産加工、家事労働など)、性的搾取型、強制結婚型、その他に類型することが現地調査および資料分析により可能となった。また、特に性的搾取では若年層をターゲットとした人身取引対策が日本もアセアンも共通して不足していることが明らかなった。 さらに、人身取引対策のなかの人身取引被害者が当事者として自立を目指す3団体の自助活動を通した社会再統合の事例をタイ国内で得ることができ、その比較分析を行うことによって、市民社会の発展を基盤とした被害者支援と被害防止の再統合モデルの構築の研究を進めることができた。 市民社会の発展を基盤とした被害者支援を検討した上で、さらに国レベルにおける国際協力について、日本のJICAが進める被害者の自立支援を目的とする人身取引対策の国際協力と、オーストラリアのARPTIPが進める法的支援を中心とした人身取引対策の国際協力の比較検討を現地調査等で進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アセアンにおける人身取引被害者支援および防止に注目した人身取引対策の国際協力に寄与する目的をもつ本研究の最終年度に向けて、今後は以下の研究計画を推進する。 ① 人身取引被害者支援および防止に注目した人身取引対策に関して、平成26年度に進めた市民社会の発展を基盤とした被害者支援と被害防止の再統合モデルを構築する。 そのために、必要な文献を入手し、現地調査を実施する。当初、計画していたオーストラリア調査は、人身取引被害者支援より法的支援に焦点を当てており、調査実施地については再考する。 ② 研究成果の発表および普及を行う。具体的には論文執筆、出版で研究成果を発表する。また、関係者らを招へいして研究成果の再統合モデルに関するシンポジウムを実施する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、当初の計画にはなかった学内での業務の増加(学長補佐)等で、当初計画していた海外出張等を実施することが困難だったが。平成26年度の3月には、海外出張を実施することができたが、清算の関係で平成27年度の支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の推進計画に従って、現地調査の実施および出版やシンポジウムの実施のために予算を執行したい。
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