2014 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアのインドシナ半島諸国における地域政策形成の比較研究
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25360028
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
生田 真人 立命館大学, 文学部, 教授 (40137021)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 拡大メコン圏 / 国境経済 / 東南アジア / インドシナ半島 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度はインドシナ半島南部の南部回廊の形成とミャンマー、タイ、カンボジア、そしてベトナムなどに関する調査を中心に研究を行った。インドシナ半島諸国では、対外経済開放の進展などによって、各国の地域経済構造が大きく変化しつつある。この変化に対応するための地域政策は例えばミャンマーでは、新しい首都の建設と経済特区の建設とを中心に展開し、タイの首都圏は経済の成長の極として再編されつつあるなど多様である。 リー教授の調査によってベトナムでは、中国との国境地域の経済活動が活発化していることが把握され、エジントン教授は日系の多国籍企業の企業行動に関する研究の発表を行い、日系企業の東南アジアと中国における企業行動に関する洞察を得た。また生田はミャンマーとカンボジアとを調査して、両国の首都圏などの地域経済動向の実態を把握した。 こうした調査によって次年度の研究の取りまとめに向けた実態調査は、ほぼ完了したように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、3年間の研究期間の2年目であり、本研究の中核的な調査と研究とを実施した。本研究は3つの研究課題を設定しているが、本年度はその内の2つの課題について研究を実施した。研究課題2のインドシナ半島諸国の地域構造再編に関する考察については、国別の経済構造の相違と国家間の経済格差を利用して、国境地域の経済再編がとりわけ進展していることが分かった。それは例えば、ベトナムとカンボジアの間の国境地域やあるいはタイとミャンマーの間の国境地帯などのように、国境地域における国際貿易の拡大や、2国間の賃金格差を利用した工業地域の形成などの産業経済上の変化が進展している。 またもう1つの研究課題である研究課題3のインドシナ半島の地域政策の考察については、インドシナ半島南部とミャンマーに注目して研究を進めた。カンボジアの国民経済は、農業を基本としながらも、その成長に当たっては工業と観光の2部門に強く依存している。そうした中で首都プノンペンは、拡大メコン圏の南部回廊形成における重要拠点であることが分かった。ミャンマーについては、経済特区の建設問題が大きいけれども、首都ネピドーの建設とそれに伴う地域構造再編も同国の地域経済構造の再編を考える上では大きいことが分かった。またベトナムについては、ハノイ首都圏の再編が進行していること、それから同国南部地域経済の中心であるホーチミンシティでも都市開発が進展していることが分かった。タイでは、首都圏を中心とする経済再編が進展しているが、南部の臨海リゾート地域における経済成長と産業発展とが、同国の地域構造の全体にとっても影響を与え、さらに同国の経済再編にもつながっている。 平成26年度の調査では、以上の諸点を明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究計画の最終年度であり、各国の地域政策に関する課題を総合的に検討する。この時、3つの研究課題の中の第1課題である東南アジアの島嶼部とインドシナ半島の経済統合についても、1年目の考察に加えて今年度はより幅広い観点から深く考察していきたい。現在、中国当局が中心となってアジアインフラ投資銀行が設置されようとしているなど、東南アジアの拡大メコン圏をめぐる開発状況が大きく変化しつつある。こうした状況等を踏まえながら、経済地理学的に総合的にこの地域について検討したい。さらに近年の欧米圏の経済地理学では、進化経済地理学や関係論的考察などの新たな方法論に関する論議が進展している。こうした方法論的検討を踏まえながら検討を進めたい。 なお研究成果の口頭発表に関しては、平成28年8月に北京で開催される国際地理学会世界大会で、研究成果を発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
リー教授のベトナム調査は平成27年1月に実施された。この調査に関する旅費の支払いについて、書類等の確認に時間を要したために平成26年度内に完了することができなかった。調査はすでに実施されており、年度内に出張書類等を確認することができたので、旅費支払は平成27年度早々に行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を用いて、リー教授がミャンマーへの調査を実施する予定である。リー教授の調査が不可能な場合には、生田が代わって調査地を変更して実施する予定だが、リー教授の調査は現状では可能とのことである。その他、関係書籍等の購入を計画している。
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