2013 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点からみた更年期不定愁訴の新しいニーズアセスメント指標の開発
Project/Area Number |
25360057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
島本 太香子 奈良大学, 社会学部, 教授 (70254505)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / ヘルスケア / 不定愁訴 / 閉経期 / 更年期 |
Research Abstract |
本研究は更年期の不定愁訴をジェンダー意識と心理学的側面からとらえ直し、患者の主体的な生き方の希望とその実現のための支援内容を加えた新たなニーズアセスメント指標を開発することにより、患者の主体的な症状との向き合い方(セルフケア)と、医療と関連領域の専門職や支援者の共通理解と全人格的ケア(トータルケア)の実現に資することを目的としている。 25年度は、ニーズアセスメント指標の基本項目を作成するための基礎調査を実施した。(1)女性外来受診者を対象とした、閉経期関連の自覚症状、重症度、QOLの評価、治療効果、ジェンダー意識、主観的健康度、心理テスト、対処のための支援ニーズ調査を実施した。対照群として、(2)健康診断受診者の女性を対象に、閉経期関連の自覚症状の種類と重症度、上記(1)と同様の調査を実施した。また予防医学的視点から、(3)若年女性(女子大学生)の月経関連症状と同調査を実施した。これらの予備的分析によりジェンダー意識、心理学的特性と不定愁訴になんらかの関連があることが示唆された。 研究計画のもう一つの柱としての、不定愁訴の自覚に関わる地域的文化的な背景に関しては、医学、心理学、社会学等多分野にわたる文献検索と、海外の研究協力者を通じて関連研究の現況についての情報収集を行ない、主として北米における更年期医療の現況を疫学研究やガイドライン、実践例等の様々なレベルで把握することに努めた。欧米においては日本と比較して、多岐にわたる不定愁訴そのものよりも、閉経後の骨粗鬆症等の疾患予防や性的活動等の具体的なQOLや健康度の維持と改善に主たる目標がおかれている。本研究の中心課題であるジェンダー意識と更年期不定愁訴との関連については、世界的にも研究は限られており、さらに文化的社会的背景を含んだジェンダー意識の影響の研究例は極めて少ない。今後とも学際的な立場での本研究をさらにすすめていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 ニーズアセスメント指標の基本項目を作成する「基礎調査」をほぼ順調に実施することが出来た。対象として(1)閉経関連症状での外来受診者、(2)対照群として人間ドック受診者、(3)女子大学生、に対して、自覚症状、重症度、QOLの評価、治療効果(受診群のみ)、ジェンダー意識、主観的健康度、生活背景、心理学的傾向、対処のための支援ニーズ調査を実施し、自覚症状と心理的傾向、ジェンダー意識等と関連性を分析した。 2 また、25年度の研究計画のもう一つの柱である「不定愁訴と対処のニーズアセスメント指標の基本項目の検討」に関しては概ね順調に進展し、本研究のテーマに関連する主として北米における治療および研究の現況は海外の研究協力者を通じて十分に把握できた。同時に、北米以外の国および地域における関連研究の情報は極めて断片的かつ希少であることが明らかになり、今後この面の情報が本研究に必要であるということになれば、これまでとは違った戦略による情報収集活動が必要になると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1 ジェンダーの評価指標について;本研究ではジェンダー意識を含めた心理的社会的背景と更年期不定愁訴との関係について研究を推進するが、これまでの調査により個々の性格に基づく「性尺度」と不定愁訴の関連には、自己のジェンダー意識(ジェンダー自意識)とこうした「性尺度」との乖離が関わっている可能性が示唆された。すなわち、ジェンダータイプとジェンダー自意識の乖離と不定愁訴の関連を調べて行くことに新たな意義があると考えられる。今後の研究では、自意識と客観性の乖離を評価する方向についても検討を進めたい。 2 調査計画;26年度は、25年度の(1)外来受診者、(2)人間ドック受診者、(3)若年女性(女子大学生)の中の希望者へ、心理学的個別カウンセリング・集団指導を実施する。またジェンダー論の講演・カウンセリングを実施、運動・栄養・睡眠・リフレッシュに関する健康講座等を実施する。それにより、支援と情報提供による自覚症状の改善効果を評価する。 3 「基礎調査」から作成したニーズアセスメント指標の信頼性・妥当性を評価するため、一般成人(健康診断受診の男女)へのアンケート調査、女性の不定愁訴の関連領域の専門職(医師、心理士等)へのアンケートを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.心理学的指標として当初予定していたテスト(VAT)を改良版(simple VAT)に変更して実施した。改良版は、テストに要する時間を短縮、対象者自身が採点、すぐに結果を知ることが可能であるので、テストの実施と採点に関わる人件費と物品費が当初計画していた予算より少額となった。2.北米閉経学会への調査事業を次年度に延期した。その理由は文献調査で、産婦人科学的に閉経関連症状の指標、治療目標の設定等は、文化的社会的背景による差異が予想以上に大きいことが判明したので、アジア、欧州等の現状の調査を深めた上で、北米に限らず他地域の女性医療関連学会への参加が必要と判断したためである。3.研究対象者への予備調査で、カウンセリングの希望者が当初予定より多く、26年度のカウンセリング実施のための人件費を増額する必要が生じた。4.当初予定していた閉経期の啓発パンフレットの印刷が年度内に出来なかったため。 1.研究対象者のなかで希望者へのカウンセリングをすすめる。 2.海外の学会への参加については、北米に限らず世界の他地域における女性医療に関連した学会で閉経関連症状の指標、治療目標の設定に関する医学的な最新のエビデンスを収集する。それにより日本での活用について検討する。また学会で本調査について結果を報告することを目標とする。 3.文献調査から得られた知見に基づき、ジェンダー心理学の新しい評価指標を加えて調査を進める。 4.健康関連の啓発パンフレットの印刷を進める。
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Research Products
(2 results)