2013 Fiscal Year Research-status Report
海事クラスターにおける女性のキャリア形成に関する実証的・実践的研究
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25360059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
石田 依子 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (40370027)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海運 / ジェンダー / 男女共同参画 / 国際比較 / 船舶 |
Research Abstract |
本研究の目的は、海運界における現在のジェンダー形成の状況を国際的に比較分析し、我が国の海運界で男女共同参画を実現させるにはどうするべきかを指摘することである。特に、本研究は、WISTA(Women's International SHipping and Trading Association)におけるフィールドワークを中心として、世界の海事世界で女性たちが具体的にどのような就労状況にあるかということを検証することが基盤となっている。当該年度においては、この年のWISTAの世界大会の開催地である米大陸に焦点を絞り、グローバルなレベルで、また業種としては船員に限らず陸上勤務も含めて、船会社はもちろんのこと、船舶管理・金融・保険・物流・教育・法律など、いわゆる「海事クラスター」と呼ばれる幅広い分野における海運業界への女性の進出状況について分析を行った。WISTAのメンバー数の推移を見ると1999年から2013年にかけてメンバー数は3倍以上に成長しているが(約500人から1500人)、これは今まで支部がなかったアジアやアフリカ、中東に新しく支部ができたことと、アメリカ合衆国内におけるメンバー数の増加によるものであるということが分かった。特に米大陸では、1999年にはメンバー数は121人だったところが2013年には372人まで成長している。ただし、数が増えたからといって必ずしも海事世界全体に男女共同参画が進んでいないということも判明した。つまり、アメリカに関して言えば、そのほとんどが海事専門の弁護士をはじめとする陸以上勤務だけに就く女性であり、船員はほとんどいないということがわかったからだ。WISTAを通して、海事世界における女性の存在状況が把握できたことは意義深いことであったが、陸上と海上の女性の就業数に大きな差があるのはなぜかということの追求が今後の課題になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、WISTA(Women's International SHipping and Trading Association)におけるフィールドワークを中心として、世界の海事世界で女性たちが具体的にどのような就労状況にあるかということを検証することが基盤となっている。当該年度は、次の二つの点を実行した。国際労働機関(ILO),国際運輸労連(ITF)を始めとして、米大陸についてのジェンダー研究に関する論文・文献などの収集と分析し、海運だけに関わらず、地域ごとに女性の就労についての外観と分析を行い、国によってジェンダー平等がどのように認識され、どのように解釈されてきたかということを分析した。また、WISTAの世界大会の際にメンバーに対するインタビューとアンケートを実施した。代表者は既に、WISTAの中でWISTA Japanの会長として世界の支部の会長や執行部のメンバー、その他のメンバーたちと交流を確立しているので、協力が得られることは確実であり、すでにWISTA全体が私の研究に興味をもち、支援を約束してくれている。これが研究がはかどる大きな要因と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はWISTAの中核を占めている欧州に焦点を絞る。この年も次の二つの点を実行する。欧州とにおけるジェンダー研究に関する論文・文献などの収集と分析を実施する。前年と同様、ここで重要なことは、地域や国ごとのジェンダー平等の土壌を把握することだ。また前年度に続いて、今後も米大陸についてさらに調査を進めたいと思っている。理由は二つ挙げられるが、前年度の調査で、海運界といっても陸上と海上では男女共同参画の度合いに温度差があることがわかったが、その原因をさらに追求したいと思っている。さらに、当該年度は欧州における調査が主流となるので、米大陸と欧州の海運界の男女共同参画の状況を比較検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はWISTAの中核を占めている欧州に焦点を絞り、当該年度に引き続き、アメリカにおいても欧州と比較しつつ調査を行う。この年も次の二つの点を実行する。(1)欧州におけるジェンダー研究に関する論文・文献などの収集と分析を実施する。当該年度と同様、ここで重要なことは、地域や国ごとのジェンダー平等の土壌を把握することだ。論文や文献の収集方法は、インターネットを通じて購入、複写の依頼、国内外の大学、図書館が書蔵する資料の調査が中心となる。 (2)欧州はWISTAのメンバーの中でも様々な国からの参加があり、どの支部も協会の中核をなす存在である。方法は、当該年度と同様、WISTAの世界大会の際にメンバーに対するインタビューとアンケートを実施し、できるだけ多くのデータを得るために、メールによる聞き取り調査も行う。また、欧州に関しては積極的に女性を雇用している企業を訪問して聞き取り調査を実施する。 次年度は欧州及びアメリカにおけるフィーウドワークが必須となるので、旅費として使用する。さらに、国内外の大学や図書館が所蔵する資料収集、複写のための費用など文献収集に使用する。
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Research Products
(4 results)