2013 Fiscal Year Research-status Report
ジョン・ロックの所有論・刑罰論における「主体」に関する研究
Project/Area Number |
25370006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
今村 健一郎 埼玉大学, 教育企画室, 准教授 (50600110)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 所有 / 労働 / 刑罰 / 人格 / 身体 / 自由 |
Research Abstract |
本年度は、ロックの所有論における「労働によって所有権を獲得する主体」とは、どのようなものかを解明すべく研究を遂行し、その成果を共著書において発表した(仲正昌樹編『「法」における「主体」の問題』御茶の水書房、2013年、第7章「労働と所有の主体―身体ある存在の危うさと弱さについて」)。この著作では、「労働によって所有権を獲得する主体」は身体ある存在であるということに焦点を当てた。ロックは「自由」や「財産」と並んで「生命」もまた、われわれの所有物であると述べており、このことから、ロックは身体所有権を説いたとされる。しかしながら、ロック自身は、その所有論において身体について具体的に語ってはいない。 所有論の文脈で「身体」に言及する哲学者としては、ガブリエル・マルセルとイマニュエル・レヴィナスの名を挙げることができる。そこで本研究では、マルセルとレヴィナスによるそのような身体に関する言説を参考としつつ、ロック的所有論において、身体はどのようなものとして把握されるべきかを考察した。マルセルをつうじては、身体の所有化を推し進めるならば、それは労働し所有する主体がもつべき主体性を侵蝕し消去してしまう懼れがあるということを、そしてレヴィナスをつうじては、身体や身体の所有は彼の言う「家」によって辛うじて成立しうるものであるということを学ぶことができた。考察の結果として、「労働による所有」の主体が身体ある存在であることに由来する危うさや弱さについての認識が進展した。 また、ロックの刑罰論の研究の一環として、自由意思の問題を論じる上で必要と思われる決定論ないし運命論の研究を行い、その成果を発表した(「運命論」『哲学研究論集』第7号、東京大学大学院人文社会系研究科・哲学研究室、78-42頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上記「研究実績の概要」にあるロック所有論の研究の他に、ロック刑罰論の研究をも行った。ロック刑罰論の研究については、ロックにおいて刑事責任の主体に求められる一般的要件とは何かを明らかにし、その研究成果を公表することを予定していたが、それが果たせなかった。しかしながら、上記「研究実績の概要」に示したように、自由意思に関連する研究においては成果を公表することができた。これらより(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの達成度」にも記したが、ロックにおける刑事責任の一般的要件に関する研究の成果発表が未達成であるので、これを最優先で行い、来年度のなるべく早い時期に成果発表を実現したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品が当初の予定よりも安価に購入できたため次年度使用額が生じた。 設備備品費 425000円(内訳:哲学関係図書購入[55 冊×5000円]・法学関係図書購入[30 冊×5000円]) 消耗品費 17038円 国内旅費 60000円
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Research Products
(2 results)