2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
加地 大介 埼玉大学, 教養学部, 教授 (50251145)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 存在論 / 力能 / 質料 / 形相 / 本質主義 |
Research Abstract |
論文「現代的本質主義をどのように理解すべきか」において、特に物的対象に関する現代の本質主義の代表的な三つの立場――様相的本質主義・質料形相本質主義・定義的本質主義――について比較考察しながら、どのような本質主義が最も有効であるのかについて検討した。その結果、最大の一般性・妥当性・応用性を見出し得る本質主義は定義的本質主義であり、それは形而上学的実在論や存在論的カテゴリー論の根拠ともなり得ること、また、その立場は様相的本質主義に対する基礎づけを行う可能性や物的対象に関する質料形相的本質主義との親和性を有すること、を見出した。 その議論の中で、三つの本質主義に共通する主張としての「存在に対する本質の先行性」に焦点を当て、そのような先行性を有する物的対象の本質とは、物的対象に関する全体論的立場に立脚したうえでの、存在論的に基礎的であるような何らかの全体性であることを指摘した。 そして物的対象におけるそのような存在論的基礎性のひとつとして浮上するのが、個別化に寄与するような統一的全体性であるが、特に物的対象の全体的な存在論的基礎性に向かっていくとき常につきまとうのは、その可能的・素材的・原因的側面としての質料的な全体性とその現実的・形態的・機能的側面としての形相的全体性との協立であり、おそらく、個別化においても、質料的な個別化と形相的な個別化が絡み合って成立していると考えられると主張した。 物的対象におけるこうした質料的側面と形相的側面の二面性は、当研究者が支持する、傾向性質と基盤性質の二元性に基づく力能的性質の存在論を裏付ける存在論的根拠のひとつと見なすことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基盤性質と傾向性質に関する一元論と二元論、傾向本質主義、傾向多種主義など、力能的性質に関する存在論の種々の立場について比較検討したうえで、最も適切と思われる力能実在論の形を提示するという平成25年度の研究計画に対しては、基本的に二元論的な立場を当研究者の立場として採用し、その二元性の根源を物的対象の質料形相性に求めることによってその性格付けも行うことができたので、大方の目的は達成されている。 しかし、力能の基礎性を含んだ形での二元論という側面に関しては、基底的力能を特定するという課題が十分に果たされているとは言えないので、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、マンフォードとアンジュムによる〈因果の力能説〉の詳細について検討したうえでその問題点や未完成な部分を改良した実在論的因果理論を構築し、その理論を個々の因果論的問題の解決のために応用する。この過程を通して、基底的力能の特定という今年度未達成の課題も果たしていく。 平成27年度は、存在論的観点から力能を体系的に分類したうえで実体の因果的効果との連関性を見極めることにより、力能に基づく実体の実在性の内実について考察し、力能を基礎とした実体主義存在論の体系化を試みるとともに、実在する実体の範囲を確定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属学部での副学部長としての管理業務による時間的制約が予想外に大きく、今年度予定していた英国ダラム大学への調査・研究旅行ができなかったほか、十分に関連図書を購入することができなかった。 26年度には前年度に予定していた英国ダラム大学への調査・研究旅行を行うとともに、関連図書も補填する。
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Research Products
(4 results)