2013 Fiscal Year Research-status Report
承認論の認識論への拡張によるヘーゲル観念論の自然化についての研究
Project/Area Number |
25370013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大河内 泰樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (80513374)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 語用論 / 承認論 / 理由の空間 / 知覚 |
Research Abstract |
2013年度は、R・ブランダムの哲学における語用論が、知覚論とどのように関係するのか検討することを通じて、ヘーゲル哲学に依拠しながら認識論を承認論から基礎づけるという本研究課題の基幹となる認識を得ることが目標であった。それにあたり、ブランダムと近い立場にあるとされながら、知覚論から出発しているマクダウェル(McDowell 1996)の議論を参照し、これと対照しながら語用論から出発するブランダムの哲学を知覚論と接合することを試みた。マクダウェルが「理由の空間」と「法則の領域」の区別から出発し、「理由の空間」の中に知覚を組み込む議論を提起しているのにたいして、ブランダム(Brandom 2010)は、Deontic NormativityとAlethic Modalityとの区別を導入し、マクダウェルの上記の区別を「理由の空間」における二種類の語彙の区別として扱うことを可能にしていることが明らかになった。このようにブランダムは語用論のなかで法則的必然性をあつかうことで、知覚対象の客観性を言語内の問題としてあつかう枠組みを提供している。このブランダムの戦略が、言語使用における主体間の承認関係から知覚の問題を扱う糸口となる。これについては現在論文を準備している。 ピッツバーグを訪問しブランダム教授が準備しているヘーゲル『精神現象学』に関する著書の草稿を検討する機会をえ、これについてブランダム教授と意見交換を行った。そのなかでヘーゲル哲学を現代行為論の観点から再検討する着想をえ、承認論を行為論の観点から再検討するという新たな視点を本研究課題の遂行に付け加えることができた。この点については今後さらに詳細に検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
所属大学の海外派遣奨学金を受け、これによる在外研究を本課題の遂行に当てることができた。当初予定していたブランダムのMaking It Explicitおよび準備中の草稿A Spirit of Trustを検討し、ブランダム教授自身と意見交換をおこなうことができ、飛躍的に研究が進展した。さらにこれに加えて、当初計画に含んでいなかった行為論的な視点が本研究課題と関わるとの知見をえ、デイヴィッドソンの行為論、マクダウェルのヘーゲルにおける行為論についての研究、ハーバーマスの行為論の再検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していたように、ホネットのDas Recht der Freiheit (Honneth 2010)におけるヘーゲル的な近代的人倫の再構成の試みとブランダムの歴史的合理性概念(Brandom 2002)とを接合しながら、承認論に歴史的視点を導入し、社会的なものとして理解される合理性を自然史的な視点から理解する理論構築を試みる。さらに、これには2013年度にえた行為論的視点が有効な道具立てを提供することになると思われることから、行為論の検討を研究計画に組み込んでいく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年度6月に、研究テーマと深く関わる研究会議がベルリンで6月に開催されることが分かり、そのための海外渡航旅費を確保するために、資料整理アルバイトの雇用を取りやめた。 上記研究会議出席のための海外渡航旅費に充てる。
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