2014 Fiscal Year Research-status Report
承認論の認識論への拡張によるヘーゲル観念論の自然化についての研究
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25370013
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大河内 泰樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (80513374)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 規範 / 語用論 / 歴史 / 制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の課題はブランダム、ホネットのヘーゲル主義的規範理論を歴史的合理性の観点から検討することであった。4月に国際ヘーゲル学会(ウィーン大学)にて行った報告では、ヘーゲル観念論を自然化するという本研究課題にとって重要なポイントとなるヘーゲルの経験科学批判を検討し、これがホーリズム的科学観とプラグマティックな認識論を萌芽的に示すものであることを明らかにした。理性の歴史化という論点については、大河内(2012)を発展させるかたちで大河内(2015)において、ブランダムの歴史的合理性理解から、コモンローモデルを採用する語用論から、言語行為の内在的な政治性を明らかにすることを試みた。ホネットに関してはHonneth(2011)の批判的検討を進め、ホネットの評価するヘーゲルのコルポラツィオン論を再検討し、制度論としての規範理論という構想について、ヘーゲルに即して積極的な結論を導いた。さらにホネットの社会哲学については、市野川・渋谷(2015)に収録された「ホネット――承認・物象化・労働」において、大河内(2010)を改稿するかたちで、とくにホネットの最近の制度論について加筆を行い、上記ブランダムとつながるヘーゲル主義的規範理論が承認論の展開として見いだせることを確認した。 3月14日には、国際会議「Dimensionen der Freiheit(自由の諸側面)」を一橋大学にて開催し、研究代表者自身ヘーゲルの制度論にかんする研究報告を行ったほか、4名の国内外の研究者による研究報告が行われ、たいへん有意義な意見交換の場となった。3月29日には、ドイツから研究者を招いてヘーゲルの現実性概念を現代行為論から検討する内容の講演をしていただいた。本講演は普遍主義的な立場を強調するものであり、本研究課題が採用する文脈主義的な視点とは齟齬を来すものであったが、本研究に不足していた論点を補足するものとしてたいへん重要な示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、国際学会での発表を1本、論文の投稿1本を目標としていたが、論文2本、口頭発表および招待講演7本(うち国際会議3本)を行うことができ、予定以上の成果を上げることができた。また国際会議と外国人研究者の講演会を開催し、成功を収めた。これによって国内外の研究者と本研究テーマについて意見交換を行うことができ、大きな進展があった。 ブランダムの語用論をハーバーマスよりも徹底した文脈主義的規範理論として理解することで、これをホネットの規範理論および制度論と接合することが本年度の目標であったが、これについてはおおむね予定されていた成果を上げることができたほか、規範の政治性という新たな論点を加えて、論文(大河内 2015)を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は予定されていたとおり、2014年度までのブランダムおよびホネットの規範理論と自然主義の研究成果を踏まえて、ハーバーマスにおける規範理論と自然主義について批判的に検討し、ハーバーマスの自然主義にブランダム、ホネットにおける自然主義を接続するかたちで、承認論のヘーゲル主義的な自然化の方向性を提示する。これに関して10月、12月に海外から研究者を招待し、講演ないし国際会議を企画する。 2015年度前半には、ハーバーマスの自然主義とプラグマティズムの関係についての論文およびヘーゲルとプラグマティズムの関係にかんするレビュー論文を執筆する予定である。後半は、本研究課題の成果を含む、現代規範理論のヘーゲル主義的転回に関わる研究成果(著書)の執筆にあてる。
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Research Products
(11 results)