2014 Fiscal Year Research-status Report
西洋近代観念説の論理――自然主義的枠組みとその解体のダイナミックス
Project/Area Number |
25370015
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 恭彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30155569)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 観念説 / 観念 / 物そのもの / 粒子仮説 / 自然主義 / デカルト / ロック / バークリ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者がこれまで提示してきた観念説に関する見解を理解する上で一般の研究者にとってしばしば躓きの石となってきたもの──すなわち、日常的な「物」を構成する要素的観念のうちからいくつかのものを選び、それらから新たな粒子仮説的な「物そのもの」の「観念」を作るという研究代表者の言い回しが、「物そのもの」と「観念」とを峻別するロックの基本的立場とどう整合するかという問題──について、その答えを明確に示す方途を探ることが、平成25年度に続き試みられた。 その際、ロックが「観念」を広狭二義に用い、「物そのもの」ですら「観念」とする場合があることをどう捉えるかが、とりわけ重要な課題となった。 バークリの「観念論」とは異なる意味で、すでにある種の「観念論」的な性格を示唆していたロックの立場を十全に理解するには、「志向性」という、その論理を十全に把握することの難しい現象に関わらざるをえない。この「志向性」の問題を前年度に引き続いて扱うとともに、ロックに先行して17世紀観念説の原型を与えたデカルトの見解を取り上げ、17世紀の自然主義的観念説の原型が持つ論理を可能な限り明晰に再提示するよう努めた。 研究を進めるにあたって注意しなければならなかったことの一つに、デカルトの自然学的著作と第一哲学に関する著作との関わりがある。デカルトは公式的には第一哲学(形而上学)をもって自然学の支えとし、第一哲学に自然主義的論理を持ち込まない反自然主義的・基礎づけ主義的立場を採っている。そうした彼の第一哲学と、そうした性格づけにも拘わらずそれが実質的に持っていた「自然主義」的基盤との関係に留意しながら、デカルトの「観念」の論理空間を検討し、それとの関係において冒頭に挙げたロックの問題により十全な回答を与えるよう努めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究成果は、イギリスの専門誌の審査を経て、Yasuhiko Tomida, "Experiential Objects and Things Themselves: Locke's Naturalistic, Holistic Logic, Reconsidered," Locke Studies, 14 (2014), pp. 85-102として公にされた。この研究成果を元に、平成26年度の研究は、さらにバークリ自身がとりわけ晩年のSirisで顕著に示したバークリ流の粒子仮説的見解の論理の解明にまで進んだ。また、その一方で、平成28年度に予定しているカントの表象説の再検討に向けての準備を進めた。当該年度の当初の計画を進めた上で、その成果を元にさらに今後の研究の布石をいくつか先んじて打つことができたということからして、研究は「当初の計画以上に進展している」と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本研究は順調に進んでおり、今後も引き続き、当初の研究実施計画に沿って着実に研究を進める予定である。
|
Research Products
(2 results)