2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370023
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
柏葉 武秀 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (90322776)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 倫理学 / 障害学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画第三年度では、出生前診断と選択的中絶と障害者を不合理な抑圧から解放する政策との両立をうたうシンガーの議論、さらにはその弱点を補うと思われるハリスの議論を集中的に研究してきた。両者に共通の主張は、障害と障害者を区別しつつ、障害を可能なかぎり消去する施策と現実に生活している障害者への社会的サポートを両立させるべきだとの「両立論」である。 シンガーの障害(者)論には障害を克服されるべきあるいは除去されるべき特質とみなす障害観がみられる。シンガーによれば、この障害観は障害に対する無理解あるいは障害者への偏見に基づくものではない。というのも、障害当事者であっても、可能であれば障害の除去を望んでいるはずだからである。つまり、シンガーは「当事者が一定の理想的な条件の下では、自らのもつある特質を消去するとの選好をもつならば、その特質は望ましくない特質である」という一種の選好説に依拠している。この選好説に危害を回避する選考を現実に誰かが持つはずの選好ではなく、「合理的選好」へと改鋳したのがハリスの「危害条件説」だと解釈して、両者の立論を一つの両立論にまとめ上げて検討している。その成果は論文「障害は除去されるべき特質なのか」『宮崎大学教育文化学部紀要』第33・34号(2016年3月)に結実する。 最終年度となる今年度は、3年間の研究をふまえて、徳倫理学の観点から提案されている生命倫理学の議論、具体的にはマクドゥーガルの新アリストテレス主義的議論を扱う予定である。投稿に向けて準備しつつある論文を仕上げるとともに、可能であれば生命倫理学あるいは応用倫理学の専門学会で口頭発表を行いたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内外の論文を網羅的に収集し、読み込んでいく作業はおおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度に当たるので、これまでの文献調査の成果を論文執筆あるいは学会発表で形にしたい。可能であれば紀要ではなく学会誌への投稿を果たしたい。
|
Causes of Carryover |
研究に必要な文献を発注したうち、年度中に入手できたものが予想以上に少なかった。また、全国学会以外の小規模専門研究会への出張を予定していたが、本務校での業務と重なって、キャンセルせざるをえなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
発注済み文献が入手できるならば、2016年度購入予定分を合わせて、予算を適切に使用できる。
|
Research Products
(1 results)