2013 Fiscal Year Research-status Report
幸福概念の理論的基盤の再構築―その文化的多様性と歴史的重層性の批判的検討を通じて
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25370026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 啓介 聖学院大学, 人文学部, 准教授 (30508528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 清紀 富山国際大学, 地域交流センター, 教授(移行) (20228886)
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 准教授(移行) (20367725)
森川 輝一 京都大学, 法学研究科, 教授 (40340286)
宮野 真生子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40580163)
佐藤 実 大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (70447671)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 幸福論 / 公共の幸福 / 道徳 / 不幸 / 比較思想 / 思想史 |
Research Abstract |
本研究の目的は「思想史的伝統における多様な幸福概念に着目し、幸福概念の再構築を試みる」ことにあり、その遂行のために研究メンバーを3グループに組織化し、相互の連携を図りつつ個々の研究を進めた。 グループ1「思想史上にみる幸福の文化的多様性の研究」では、ヒュームとスミスの道徳哲学の理論的枠組みの比較を通して、その後の功利主義的幸福概念がイギリス思想史のどこに胚胎していたのかが考察され、他方、中国思想史においては、荀子と王充の相逐心説の比較を通して、徳と幸福との因果関係理解の変化が研究された。ここから二つの思想史における道徳と幸福の関係性という問題群が浮かび上がった。 グループ2「変容する社会における幸福の歴史的重層性の研究」では、現代の科学技術時代における公的幸福の成立条件をめぐって、ハイデガーやアーレントの議論を手がかりに研究がなされ、他方、近代日本思想においては、都市化と近代化の過程のなかで自然という概念が鍵となって、個人・社会の関係と幸福とを結びつける思索が展開していたことが考察された。このように、近代以降の社会における公的幸福の条件が明らかにされた。 グループ3「西洋宗教思想史を中心とする不幸な生とその時間性の研究」では、西欧近代における神義論とその批判の展開を通して、悪(不幸)を思想の課題とするために、人間中心主義的視点と非人間中心主義的視点の二重の視点がどのように構築されたかが考察され、また、現代における宗教哲学において、不幸な死を不幸と規定することがどうして可能なのかという分析哲学的問題が、死の害の哲学を手がかりとして考察された。このように、不幸を宗教思想的観点から捉えるための研究基盤が構築された。 以上、各メンバーがグループ内で各自の研究課題を遂行しつつ、全体で討議することを通して、各自の研究成果発表も含め、メンバー全体として着実に研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度を通じて、研究代表者・研究分担者は、各グループ内での思想研究・思想史研究を進めつつ論考を準備し、2度実施したコア研究会において意見交換をおこない、互いに異質な思想史的伝統の多様性を考慮しつつ、幸福概念を把握するための理論的基盤をおこなった。その成果の一部は、各メンバーが個別におこなった学会報告や論文の刊行を通じて発表されている。計画していたウェブサイトについては、平成25年度末の研究代表者の所属機関の変更もあり、開設には至らなかったが、準備作業が進行中である。以上のように、本共同研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究成果を踏まえて、当初の計画通り、平成26年度は各グループ内での課題の深化を主な目的として、コア研究会を3回程度実施する。また、研究課題の進展があったため、古代思想、社会心理学、近代思想などの各分野から、研究協力者を招いて、専門的知見の提供を依頼する。各自が研究成果を公表しつつ、こうした研究会の実施を通して、平成27年度の共同研究の達成をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度、研究メンバーのうち1名が、体調上の事情のため、コア研究会に一度参加することができなかった。その参加費用分の旅費に残額が生じ、その分を平成26年度の研究協力者の研究旅費および謝金とするために、若干の次年度使用額が生じた。 当初の申請のうち、設備費・消耗品・その他費用については、申請時の予定通りの使用目的ならびに予算計上とする。平成25年度にメンバー1名がコア研究会に一度参加できなかった研究遂行分を補填するため、平成26年度は、申請時よりも研究協力者による研究発表・知識提供を多くおこない、平成25年度から持ち越した費用を国内旅費ならびに人件費・謝金へと繰り入れて経費を使用する。
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Research Products
(16 results)