2013 Fiscal Year Research-status Report
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25370027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉武 久美子 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90468215)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 倫理的価値構造 / 意思決定 / 合意形成 / 正義 |
Research Abstract |
本研究「人の生命・健康に関わる医療情報の価値構造の研究」は、「人の生命・健康に関わる医療情報の提供・共有」に含まれる課題を分析し、その適正な方法の条件を考察することによって、情報共有に実現すべき「公正・正義」の倫理的構造を明らかにすることを目的とする。 平成25年度は、パーソナルな情報共有とパブリックな情報共有のそれぞれの例を用いて、現状分析を進めた。パーソナルな情報共有については、出生前診断、生殖補助医療技術などの問題においては、ステークホルダーとなる胎児、児に対する情報が不確実なことが多く、また制度整備も不十分である。そのため、情報共有については、時間と空間の視点を組み込んだ概念、「Prospective Consensus building」を用いることの重要性を明らかにした。本成果は、Theory and Practice of Hospital Training for Medical Ethics -Consensus Building Method with Spatio-Temporal Perspective として発表した。 他方、パブリックな情報共有の例としては、福島県南相馬市の住民が抱える健康問題に関して分析を行った。不確実性の高い健康問題について、行政から住民に向けた情報提供が適切に行われなければ、住民の自己決定を阻害しかねないという正義に関する問題と深く関わることを示した。本結果は、Justice of Sharing Information as Commons After the Nuclear Disaster in Fukushimaとして発表した。 今年度の成果は、両者の分析例に共通する空間と時間の要素を組み込んだ概念「Prospective consensus building」を創出できたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究「人の生命・健康に関わる医療情報の価値構造の研究」は、「人の生命・健康に関わる医療情報の提供・共有」に含まれる課題を分析し、その適正な方法の条件を考察することによって、情報共有に実現すべき「公正・正義」の倫理的構造を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、パブリックな情報共有とパーソナルな情報共有の例から、共通して重視される概念「prospective consensus building」をできた。本成果の一部は、原著論文「Prospective Consensus Building-Ethical consideration on history of reason and list of risks」としてまとめるとともに、国際学会発表2件を行うことができた。 平成26年度は、本研究の成果である「prospective consensus building」の概念についてさらに考察を深めて、環境の視点を加えるとともに、正義、公正に関する要素の探索を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度の成果をもとに、医療情報共有に関わる正義・公正に関する要素の探究を深めて、最終年度の理論化に向けた準備をすすめていく。 パーソナルな情報共有、パブリックな情報共有のそれぞれについて、情報共有の手続き、情報提供者・受け手の状況、資源の特徴の視点から整理していく。 抽出した概念の内容を確かなものにするため、パブリックな情報については、宮崎県高千穂町などのまちづくりから、現地視察、関係者から情報収集し、健康にかかわる医療情報の共有のしくみ、重要な視点を考察する。また、パーソナルな情報共有については、病名の告知について取り上げて考察を進める。 他方、医療の正義に関する国内外の文献、正義に関する西洋哲学思想の文献、東洋哲学における正義に相当する概念に関する文献等を参考に医療情報における正義とは何か、理論的な考察を行う。 さらに、「prospective consensus building」の概念と医療の正義の関係を考察するために、国内外の学会への参加、研究者等との意見交換を行うとともに、研究成果を逐次、発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の予算は、予定通り使用した。予定していた金額より安価で購入できたため残額が発生した。残りは次年度の繰り越しとして、使用する。 平成26年度は、消耗品20万、旅費30万、その他(論文校正、翻訳代)20万で予算を立てている。繰り越し分は、旅費および消耗品に加える。
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