2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Philosophy of Giving and Taking Lives in the Light of Fairness and Individuality
Project/Area Number |
25370035
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊勢 俊彦 立命館大学, 文学部, 教授 (60201919)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒューム / パトナム / 所有 / 因果性 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間が他の人間や動物とのあいだで命を与え・命をもらう。人間の社会と生活を支える諸活動を、こうした関係のネットワークに位置づけ、意義をとらえ直すのが、本研究の大きな目的である。 28年度の研究では、直接の主題を人間と人間の関係から人間と物件の関係に移し、とくに所有を考察の対象とした。ただしその場合も、所有者としての個人が所有する物件に対して持つ力が、社会の他の成員の行動にかんする想定に依存している点に注目し、人と物との関係が人と人との関係に支えられているあり方の解明を行なった。 この解明を行なうにさいして基底としたのは、ヒュームの所有論である。ヒュームは、所有を因果関係の一種とし、誇りの情念が生起する条件の一つである誇りの対象、すなわち自己と、誇りの原因、すなわち自己と関係づけられた、快を生む何らかの事情との関係のうち、所有が最も重要であると述べる。一方でヒュームは、所有の観念に内実を与える上でいくつかの困難を指摘している。ヒュームが見出した困難の性格を明らかにするために、本研究では、H. パトナムの「言語的分業(言語的労働の分割)」についての議論との比較を試みた。パトナムは、言語を介した指示という、人から物への意味論的アクセスが、言語共同体の中で各人が自分に割り当てられた「仕事」を期待通りに行なう「分業」に依存していることを指摘した。所有という、人から物への実践的アクセスもまた、所有者としての個人だけでなく、社会の他の成員の行動に依存している。ゆえに、「意味が頭の中にない」ごとく、「所有」についても、頭の中にある完結した観念を形成することはできないのである。 こうした構想にもとづく成果は、応用哲学会(28年5月)ほかで発表し、『立命館文学』掲載の論文として公刊した。(29年3月)
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Research Products
(3 results)