2015 Fiscal Year Research-status Report
相対主義の歴史的起源の解明-新視点からのアプローチ-
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25370036
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中澤 務 関西大学, 文学部, 教授 (10241283)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 相対主義 / ソフィスト / プロタゴラス / 人間尺度説 / ノモスとピュシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代において重要な役割を果たしている相対主義の歴史的起源を、新たな視点からのアプローチを通して解明することになる。そのために、本研究は、紀元前5世紀ギリシアのソフィスト・プロタゴラスの相対主義思想に注目し、「人間尺度説」を中心とする彼の思想全体の総合的な再解釈をおこなうとともに、彼を中心として展開された紀元前5世紀の相対主義思潮全体について、新たな評価を提示することを目指す。 平成27年度は、「基礎的研究1」(プロタゴラスの人間尺度説をめぐるテキストおよびプラトン・アリストテレスなどの当時の解釈や批判を詳細に検討し、妥当な解釈を提示する作業)の成果を踏まえ、「基礎的研究2」(プロタゴラスの社会・政治思想の全体像を『プロタゴラス』の分析を通じて解明し、人間尺度説との関係を明らかにするとともに、言葉をめぐる断片を再解釈し、彼の言語思想の全体像を明らかにする作業)を、引き続き実施し、その成果をまとめた。 さらに、準備作業を進めていた「基礎的研究3」(ノモスとピュシスのアンチテーゼの問題を中心に、当時の多様な論争の文脈を検討し、紀元前5世紀の相対主義思想の文脈の中にプロタゴラスを位置づける)に本格的に取り掛かり、さまざまな観点から分析をおこなった。 今年度実施した具体的な研究の内容としては、(1)紀元前5世紀の古代ギリシャにおける相対主義思想の特質を、民俗学的・歴史的な側面から分析し、プロタゴラスの思想と関連づける作業、(2)前年度に実施した『ディッソイ・ロゴイ』をめぐるテキスト分析の成果を踏まえてまとめる作業、(3)プロタゴラスの相対主義思想の全体像を、総合的に考察する作業、などが挙げられる。 以上の作業を通して、当初予定されていた、プロタゴラスの相対主義思想とその周辺的問題をめぐる調査と考察はすべて完了し、最終年度の「総合的研究」を遂行する準備が整えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、研究は当初の計画をやや上回る進捗状況で進展しており、今年度までに完了させる予定の研究は、すべて完了している。これまでの進捗状況からして、研究のまとめの年度である最終年度に予期しないことが生じる可能性は極めて少ないと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25,26,27年度と、当初の計画どおりに研究を遂行でき、当初予想されたとおりの成果があがっている。これまでの研究により、「基礎的研究」1,2,3のすべての段階において十分な知見が得られ、研究成果の全体をまとめる準備も順調に整えられていることから、最終年度においても、問題なく所期の成果を挙げることができると予想される。そのため、研究計画の変更を行う必要はない。
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