2013 Fiscal Year Research-status Report
「共生の倫理学」の基礎構築をめざした多文化性と多文化共生に関する現象学的研究
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25370039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
川瀬 雅也 佐世保工業高等専門学校, 一般科目, 准教授 (30390537)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミシェル・アンリ / 生の現象学 / 文化の現象学 / 制度化 / 共同体 |
Research Abstract |
本年度の研究課題は「『生の現象学』における「文化」の一般的規定の明確化」であった。四年に亘る研究全体の基礎固めのために、本年度は、ミシェル・アンリの「生の現象学」の観点に立って「文化」を考察する際の基本的スタンスを明確化し、問題の焦点を浮かび上がらせることに努めた。 研究成果としては、9月28日に開催された、日本ミシェル・アンリ哲学会主催の特別シンポジウム「ミシェル・アンリとフランス現象学」において、"La naissance de la culture d’apres la phenomenologie de la vie chez Henry"と題する提題を行い、また、11月4日には、ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)で開催された Journees d’etude Fonds Michel Henry : Genese et structure de L’Essence de la manifestation において、同一タイトルで内容の一部を変更した発表を行った。ここでは、「文化」を、「意味」の現出ではなく、「価値」の現出として理解し、アンリの「生」概念が、この「価値の現出」の可能性として捉えられていることを確認した上で、自己受苦に基づく自己超過としての生がいかに文化を形成するか、また、生によって形成された文化の本質的特徴、文化に対立する「生の病」としての野蛮の由来、さらには、この野蛮からの救済としての文化の位置づけ等について検討した。 また、後半は、常に社会制度や共同体のうちで現出するという文化の社会的側面を、アンリの「生の現象学」からいかに説明できるかについて考察した。この研究の成果は、2014年6月28-29日に北海道大学で開催予定の日本哲学会第73回大会にて「個体と文化──アンリの生の現象学における制度化と共同体」というタイトルで発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、当初の研究目的に沿って進められ、進捗状況も、若干の遅れはあるものの、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も、基本的には研究目的に沿って進めて行くが、今年度の研究を遂行する中で、「文化」について多面的に論じるためには、当初の想定より以上に、現象学以外の他の哲学思想、また、社会学や文化人類学などの哲学以外の学問の成果を踏まえる必要があることを痛感しており、今後は、そうした方面にも研究領域を広げて行く必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究は、ミシェル・アンリの生の現象学に関する研究が主体となったが、ミシェル・アンリに関する文献はすでにかなり揃っており、新規購入分が少なかった。また、旅費に関しても、別の経費で補充することができたため、次年度以降にまわすことが可能となった。 次年度からは、所属先が変更になるため、研究を遂行するための設備や資料を新たに購入する必要が生じる。「次年度使用額」はそうした設備や資料の購入にあてる予定である。
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Research Products
(2 results)