2015 Fiscal Year Research-status Report
原左氏伝の翌年称元法から春秋左氏経の翌年称元・正月即位法への展開と春秋学派の研究
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25370041
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
吉永 慎二郎 秋田大学, その他部局等, 名誉教授 (70240330)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原左氏伝からの抽出・編作に拠る春秋経の制作 / 原左氏伝の翌年(踰年)称元・当年即位法 / 春秋経の翌年(踰年)称元・正月即位法 / 四時記事配列法 / 原左氏伝の「立徳」「立功」「立言」 / 原左氏伝の覇者と華夷秩序 / 春秋経の「天子の事」と「名」の秩序 / 春秋経の二種の暦法と左伝の三正論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、26年度の成果を踏まえ、25年度の実施計画に記載した11項目の内、1.立年称元法から翌年(踰年)称元法への移行について、2.践祚と即位について、3.四時記事配列法の成立について、4.左氏伝と春秋経における暦法と周正・夏正の問題について、6.正月即位法の成立について、7.「元年。春。王。正月。」と正月即位法について、9.春秋左氏経制作の歴史的意味、10.春秋テキストの歴史的展開について、の八点について重点的に考察し、この三か年の研究の到達点として、本年10月に『春秋左氏経文の原春秋左氏伝からの抽出・編作とその作経メカニズムの研究―春秋二百四十四年全左氏経文の抽出・編作挙例と全左伝文(下)―』を刊行した。同書の第一章の、一「春秋経」はいかにして制作されたか―「春秋経」成立に至る三段階、二「原左氏伝」と「春秋左氏経」の「暦法」並びに三正論について、三「原左氏伝」の当年即位・踰年称元法から「春秋左氏経」の踰年称元・正月即位法へ、の各節に於いて上記八点の論点は体系的に解明され、特に暦法問題の解明の大いなる進展が全体としての体系的理解を大きく進めた。 その暦法問題の解明の要点は以下にある。現行干支紀日法の起点はBC1567年正月甲子朔にある。このBC1567年はこれより十六蔀(一蔀は76年、76年×16=1216年)後のBC351年正月丁亥朔の実測に基づく計算上の起点である。このBC351年を暦元として遡って制作されたのが「春秋左氏経」の暦法である。従来春秋左氏経の日食記事の干支は春秋期のもので正しいとされてきたが、実は春秋左氏経の干支紀日法と同根の現行干支紀日法によって春秋左氏経の日食干支を検算するわけで、「正しい」結果を得るのは当然となる。この事態は今本「春秋経」の日食記事が戦国期のBC351年を暦元として遡った「春秋左氏経」の暦法に拠り再整理されたことを明証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成27年度の研究を通して、「原左氏伝」から「春秋左氏経(春秋経)」が抽出・編作の手法に拠り成立したとの本研究の基本的仮説について、具体的な各論を踏まえてのより立体的・多面的な考察と論証が着実に進められており、なかでも本研究の隘路となる暦法問題について大きな進展があり、27年11月にはその成果の一端を「「原左氏伝」及び「春秋左氏経」の暦法と三正論」と題しての研究発表(秋田中国学会第161回例会)を行い、またそれらの成果を含むこの三年間の本研究の集約として、27年10月には科研報告『春秋左氏経文の原春秋左氏伝からの抽出・編作とその作経メカニズムの研究―春秋二百四十四年全左氏経文の抽出・編作挙例と全左伝文(下)』(A4版、全192頁、私家版、秋田活版印行)を刊行した。同書は既に150余名に及ぶ国内外の研究者に寄贈・頒布され多大の反響を呼ぶとともに、活発な意見交換がなされている。 このように、本年度の本研究は、ほぼ予定通り順調に進展を見ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、25・26・27年度の研究成果を踏まえて、原左氏伝の編纂意図、春秋左氏経の制作意図という二つのテーマに関する論考を執筆し、これらと過去三年間に刊行した科研報告『春秋左氏経文の原春秋左氏伝からの抽出・編作とその作経メカニズムの研究―春秋二百四十四年全左氏経文の抽出・編作挙例と全左伝文(上)―』『同(中)』『同(下)』を集大成したものを、一冊の単行本『春秋経の原左氏伝からの制作メカニズムの研究と全左氏経・伝文の分析』(仮題)として出版する作業に入ってゆくこととなる。この作業は28年11月末をめどに草稿を完成させ、その校正と出版は29年度に為されることとなる。この作業の過程を通して、平成25年度に提起した11の論点の残り3点、即ち、5.左氏伝と春秋経における「天王」について、8.魏の称夏王と夏正について、11.春秋学派の歴史的実態とその展開について、が考察されてゆくことになる。このうち、5.と8.については既に本科研研究以前の旧稿の成果があり、これらを本研究の成果と照らし合わせて吟味・推敲してゆく作業となり、その成果は上記単行本に反映される。したがって、残る大きなテーマとしては、11.ということになり、このテーマは春秋・戦国思想史の展開と深く密接に関連するものとして、28年12月以降そして29年度にわたり本格的に探究・考察されてゆく主要テーマとなる。 このように本28年度は、上記所要の課題に取り組みつつ単行本の草稿制作の作業を進め、その完成後は11.のテーマの研究に進んでゆくこととなる。
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Causes of Carryover |
消耗品費単価見積もり上の誤差により些少の残金となったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度経費に繰り越して消耗品費等として使用することとなる。
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Research Products
(3 results)