2015 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア仏教の大乗戒根本経典『梵網経』の最新の写本・版本情報に基づく校訂本作成
Project/Area Number |
25370045
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 梵網経 / 写本 / 偽経 / 疑経 / 大蔵経 / 校訂 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の本年は,『梵網経』の早期の形態を示す敦煌写本,日本現存古写本,京都国立博物館所蔵本,東京国立博物館所蔵本,房山石経,高麗蔵初雕本・再雕本,金蔵,開元寺版(毘盧蔵)など20数種類を材料として,『梵網経』の最古の形態と後代の変容を綿密に調査した。また,梵網経の写本および関連諸資料蒐集のため,ロンドンとプリンストンに出張した。研究成果の報告として二つの報告を行った。2016年1月にプリンストン大学で行われた国際会議「仏教写本の諸文化」にて,"Coping with Too Many Variants: A New Type of Edition of the Scripture of Brahma's Net"(夥しい数の異本に対応するために─『梵網経』の新たなタイプの校本)と題する報告をした。その中で『梵網経』の写本・木版印刷に見られる特徴として,異本(異読,文字のヴァリアント)が異常なほど多いことを指摘した。そしてそのような場合に,どのような校本を作成すれば初期の形だけでなく,後代の歴史的展開を肯定的に描写できるかを問題提起し,その可能な一方法を『梵網経』に即して例示した。特に中国・日本を研究する研究者から予想以上の賛同を得ることができた。さらにもう一つの報告として,2015年9月に「思想史のための文献学─『梵網経』の研究史と今後の展望」と題する講演を東洋大学東洋学研究所にて行った。また既に出版された研究としては,『梵網経』を含む中国の偽経の特徴について,オランダのブリル社から出版された Brill's Encyclopedia of Buddhism 第1巻に "Chinese Buddhist Apocrypha"(中国仏教の偽経)と題する概説を公表した。
|