2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉水 清孝 東北大学, 文学研究科, 教授 (20271835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 正人 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50183926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミーマーンサー / クマーリラ / ヴェーダ / 寛容 |
Research Abstract |
本研究はミーマーンサー学派(聖典解釈学派)が他の学派や宗教集団に対していかなる「寛容」意識を抱いていたかを主題としているが,平成25年度には,研究計画のうち特に,ヴェーダの部門のうちのサーマヴェーダに対するミーマーンサー学派の意識を解明した。ヴェーダ大規模祭式ではリグヴェーダ,サーマヴェーダ,ヤジュルヴェーダのヴェーダ三部門の祭官の参加と協力が必要であるが,研究代表者は論文「ミーマーンサーにおけるYajurveda中心主義について」において,ミーマーンサー学派が実はヤジュルヴェーダに大幅に肩入れしており,ヤジュルヴェーダ祭官が行うリグヴェーダからの引用マントラの朗誦やサーマンの詠唱はヤジュルヴェーダ風に低声で行うこと,さらにリグヴェーダとサーマヴェーダそのものをヤジュルヴェーダに従属する文献と見なしていることを明らかにした。さらに論文“Distinguishing Deities―A Contextual Analysis in Mimamsa”では,ミーマーンサー学派では,ソーマ祭でのリグヴェーダ朗誦とサーマヴェーダ詠唱を,ヤジュルヴェーダ祭官による供物献供と同じ効力があるものと認め,一見きわめて寛容な姿勢を示しつつも,実は,祭式中の同じ場面でヤジュルヴェーダに記載された神格の名前とサーマヴェーダに記載された神格の名前が相違する場合には,前者を優先すべきだと説いていること,しかもそれを証明するにあたってクマーリラは,文法学に対しインド哲学諸学派で認められていた無条件的な権威を留保して,彼以前に行われていた,神格名称の文法学的説明を不服とし,名称が置かれている文脈を考慮する語用論的な証明を行っていることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は,サーマヴェーダ研究を専門とする研究分担者と緊密に連絡を取り,サーマヴェーダの朗誦が実際にどのように行われていたのか教示を受け,関連する文献資料の提供を受けた。また2013年6月の印度学宗教学会学術大会,および2013年8月の日本印度学仏教学会学術大会での発表をもとにして,更に2014年1月にインドのケーララ州コジコーデで開かれた第6回International Vedic Workshopに海外出張旅費により参加して研究発表をおこなって,海外のヴェーダ研究者から教示を受けることができた。さらにこのWorkshopでは,当地のバラモンたちによるヴェーダのマントラ朗誦の実演に臨席するという貴重な経験を得て,ヴェーダ聖典が主題とする古代の祭式の実際を,より具体的に理解することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,引き続きヴェーダの諸部門に対し聖典解釈学派がどのような態度をとっているのか調査を進めるとともに,ヴェーダを信奉しないという意味での異端の宗教,特に仏教に対し,クマーリラがどのような態度をとるのかを解明する。8月最終週にはハイデルベルクにおいて,仏教知識論の研究者が世界中から集まる第5回国際ダルマキールティ会議が開かれるので,研究代表者は外国旅費によりこれに参加し,クマーリラの直後にダルマキールティにより明確化される仏教知識論的世界観と比べ,クマーリラの思想がどこまで共通し,どこから対立してくるのかを発表する。会議終了後は,会議の紀要に載せる論文を作成し,英文校閲を依頼する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者は,2013年8月に松江で開かれた日本印度学仏教学会学術大会に参加する予定だったが,参加できなかった。 研究分担者は,2014年8月に東京の武蔵野大学で開かれる日本印度学仏教学会学術大会で発表し,併せて東京大学で資料収集をおこなう。
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Research Products
(7 results)