2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉水 清孝 東北大学, 文学研究科, 教授 (20271835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 正人 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50183926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミーマーンサー / クマーリラ / ヴェーダ / 寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はミーマーンサー学派(聖典解釈学派)が他の学派や宗教集団に対していかなる「寛容」意識を抱いていたかを主題としているが,平成26年度には,研究計画のうち特に,仏教に対するミーマーンサー学派,特に600年前後のクマーリラの見解を解明した。研究代表者は論文“Kumarila's Criticism of Buddhism as a Religious Movement in His Views on the Sources of Dharma”において,クマーリラが,『マヌ法典』が挙げる四つの法源の見地から,社会における宗教としての仏教をどのように批判しているかを検討した。これにより,クマーリラは,ヴェーダの諸流派は互いに平等であり,他流派に対して寛容に接するべきだと力説するが,その裏返しとして,ヴェーダの価値観に背く異端宗教に対しては極めて不寛容に臨んでおり,観察と論理による検証を重視して理法(dharma)を一律に普遍化する仏教の立場を,法源のうちでは最も優先順位が低い「自己の満足」の濫用と見なしていることが判明した。また研究代表者は,ミーマーンサー学派の寛容論をインド哲学全体の中に位置づけるために,インド哲学諸分野での時代設定に関する最新の成果を集めた論集Eli Franco (編), Periodization and Historiography of Indian Philosophyへの書評を発表し,現代においては,Frauwallnerがおこなった時代設定に関して編者が問題視するアーリア優位主義的偏向以上に,在俗バラモンの集団主義と出家教団の個人主義という,Dumontが定式化したインド的人間観の通説を再検討し,中世の初期から後期にかけて,バラモン哲学諸学派において人間個人に関する見解がどのように展開したかを解明する必要があることを提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には,ミーマーンサー学派と仏教との対立関係について,外国旅費を使って海外の多くの研究者と意見交換をすることが出来た。まずハイデルベルクで開催された第5回国際ダルマキールティ会議において研究発表し,クマーリラとダルマキールティにおける世界観とそれに基づく論理思想の対立について,クマーリラは晩年にダルマキールティから影響を受けたとするFrauwallnerの説を否定する証拠を提示した。またウィーンではオーストリア科学アカデミーの研究会において,校正刷段階の論文“Kumarila's Criticism of Buddhism as a Religious Movement in His Views on the Sources of Dharma”を発表し,参加者から意見を受け,最終稿の作成に生かすことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,26年12月に龍谷大学で行った研究発表の紀要論文として,ミーマーンサー学派のクマーリラがヴェーダ諸流派間に求めた寛容と,仏教に対する不寛容との相関的関係を解明する論文を完成して提出する。さらにミーマーンサーとヴェーダーンタとの連続性の一面として,ヴェーダーンタでの絶対者の呼称のひとつの「最高我」がミーマーンサーで強調する行為の継続的遂行と密接にかかわることを解明する。そして外国旅費により,6月末にバンコクで開かれる国際サンスクリット会議において,この主題での研究発表を行い,会議終了後は,会議の紀要に載せる論文を作成し,英文校閲を依頼する。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使用している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者が翌年度分に繰り越して使用する。
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Research Products
(7 results)