2014 Fiscal Year Research-status Report
<関係>概念に基づくヴァイシェーシカ学派の存在論の再評価
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25370061
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Research Institution | Doho University |
Principal Investigator |
平野 克典 同朋大学, 文学部, その他 (70513737)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヴァイシェーシカ / パダールタダルマサングラハ / ヴィヨーマヴァティー / ニヤーヤカンダリー / キラナーヴァリー / samyoga / samavaya / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヴァイシェーシカ学派の<関係>(sambandha)概念の考察を通じて、同学派の存在論の特徴を解明することにある。平成26年度の研究実績の具体的内容は、以下5点である。 (1)『パダールタ・ダルマ・サングラハ』の注釈書『ヴィヨーマヴァティー』の「結合の章」のサンスクリット原典の校訂作業を完了した。(2)『ヴィヨーマヴァティー』の「結合の章」の和訳を完成した。(3)Sampurnanand Sanskrit University のSarasvati Bhavan Library を訪れ、『ヴィヨーマヴァティー』の写本を閲覧し、上記(1)の精度を上げた。(4)上記(2)に関連して、プネー大学のCASSの元所長であるV.N.Jha教授との読書会をプネー(インド)で開催した。(5)プネーにあるBhandarkar Oriental Institue 所蔵のジャイナ教の論書『プラメーヤ・カマラ・マールタンダ』の写本コピーを入手した。 『ヴィヨーマヴァティー』の「結合の章」の翻訳を作成し、その内容を吟味した本研究によって、10世紀の同学派が説く<結合>の概念が明らかとなった。また、同章に言及される反論から、当時の<結合>を巡る論題を解明することができた。すなわち、本研究には、ヴァイシェーシカ学派の<結合>に関する思想史構築を前進させる一研究としての意義と、他学派の<結合>理解を視野に入れたことで、10世紀のインド哲学界における<結合>概念の解明に至る第一歩という重要性を指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、<結合関係の重層的な考察>である。すなわち、ヴァイシェーシカ学派に止まらず、他学派との<結合>を巡る論争を分析することで、<結合>を重層的に理解することを計画した。26年度の成果はおおむねその計画に沿っており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)『ヴィヨーマヴァティー』以外の注釈書『ニヤーヤカンダリー』及び『キラナーヴァリー』の「結合の章」を分析する。(2)<結合>と<内属>という2つの<関係>概念に基づくヴァイシェーシカ学派の存在論の特徴を明らかとする。(3)これまでの研究の成果を学会で発表すると共に、雑誌に投稿する。
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