2014 Fiscal Year Research-status Report
サンスクリット語古典のペルシア語訳とインド古典諸学の体系
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25370066
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Research Institution | Hokkaido Musashi Women's Junior College |
Principal Investigator |
榊 和良 北海道武蔵女子短期大学, その他部局等, 講師 (00441973)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 翻訳文化 / ペルシア語 / ギーター文献 / 学問体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、写本調査と成果の一部発表を行った。 6月には、ロンドン・ダブリンで写本調査を行い、ヨーガに関連する翻訳文献にも含まれる占星術や医療占星術に関連する写本の調査と複写を行い、現在整理・翻訳中の『真理の綱要』の該当箇所との比較対照をおこなった。また、インド中世文化史家サイモン・ディグビー追悼記念学会に参加して、翻訳文献研究者らと情報交換を行い、資料提供や今後の研究活動への助言を得た。10月には日本南アジア学会において、「ナータ・ヨーガを説く『ギーター・サーラ』」と題して、スーフィー・シャリーフという人物による『ギーター・サーラ』の翻訳とされるペルシア語の論攷について、諸ギーター文献の中でもヴェーダーンタ的特徴をもちヨーガのマニュアルにも似た『ウッタラ・ギーター』に依拠したものであることを明らかにした。さらに、同一人物によると考えられる他のヨーガ的修道論の翻訳における文体や術語の比較により、スーフィーたちにヴェーダーンタ哲学思想を伝えたものは、この書に示されるようなウパニシャッド的ブラフマン論にあり、それがスーフィー神学に通じるものであるとみなされたという根拠を示した。11月には、「前近代南アジアにおけるイスラームの諸相―在来社会との接触・交流・変容―」と題するシンポジウムにおいて、「翻訳文化の示す学知と創造性」と題して発表し、本研究の主題となっているペルシア語文献群に示されるインドの古典的学問体系を、サンスクリット語によるインドの伝統的な古典諸学の体系と比較対照し、ペルシア語文献の作者たちが示した学ぶべき学芸の種類や実際に翻訳された文献群の幅広いジャンルを示すことで、インドの古典的学問体系が翻訳を通してイスラーム知識人社会に伝えられたことを実証し、出版物に著した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた学問体系に関する諸文献の翻訳がほぼ順調に進んでいるため。 さらに精確さを期すために、信頼できる写本に基づいて刊行本を補完することにより、出版されているテキストにおける欠落や不明瞭さを補うことも必要と考え、作業を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究活動は、国際学会での発表とその成果の公開準備を中心とする。春にバンコクで開催される国際サンスクリット学会では、ヨーガ関連文献のペルシア語への翻訳史を総括する。そして校訂出版されていないヨーガ関連テキストに関して、諸サンスクリット語写本とあわせてペルシア語訳がテキストを復元するのに役立つことを提示する。秋には、インドの伝統的学知に関して13世紀から19世紀までにペルシア語で著された翻訳文献や論攷に関して、包括的で批判的な調査研究を行い、その成果をヴェブサイトや出版物を通して公開していくことを目的としたPerso-Indica というプロジェクトの学会に参加し、インドにおけるサンスクリット古典のペルシア語への翻訳活動の黎明期におけるペルシア語訳された呪術文献の果たした役割について発表し、研究者たちと情報交換を行い出版計画を話し合う。ペルシア語訳された諸文献の整理・翻訳に関しては、『真理の綱要』における創造神話やそれに関連する部分がもとづいたであろう原テキストを特定する作業を進める。また、サンスクリット古典諸学の体系を紹介したペルシア語文献群の翻訳に関しては、当該分野のサンスクリット語での根本聖典や綱要書との照合をおこなっていく。
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