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2013 Fiscal Year Research-status Report

「聖なるものの顕現」における図像・造形物・言葉の働き-画像資料と儀礼から-

Research Project

Project/Area Number 25370069
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

細田 あや子  新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00323949)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords聖なるものの顕現 / ヴィジョン / パフォーマティヴィティ / 儀礼 / 祈り / 宗教美術
Research Abstract

「聖なるものの顕現の図像学」の構築のために、ヴィジョンや夢に関する資料として、ハインリヒ・ゾイゼの著『範典』写本、法然の伝記を表現した絵巻「法然上人絵伝」(知恩院)を解読、分析した。
1.『範典』を読むと、修道院内での個人的な瞑想や沈思、イエス像や聖母子像などの前での祈り、懇願、あるいは賛美や称揚の言葉を唱えることが、ゾイゼがヴィジョンを得るきっかけとなっている。実際に目に見えるもの、耳で聞こえるものをとおして、不可視なるもの、心の声を体験しており、外的イメージと内的イメージが混ざり合っている。磔刑像などの彫刻と神のヴィジョンが異次元間を超越し、重なりあい融合する。祈りの言葉と身体の動きが相互に連関し、ヴィジョンが開かれる。イエスの受難の身体を見つめ、それを自らの身体にも刻印させ、霊的ヴィジョンを体験するゾイゼにおいて、肉体と精神の分離も生じないということが明らかとなった。彼のヒエロファニーの体験が著作からはっきりと読み取れた。
2.「法然上人絵伝」において見いだされる、ヴィジョンの情景、阿弥陀三尊像や勢至菩薩像の彫刻、夢の善導、さらには法然自身などを絵画化、造形化する行為は、それらを具体的なものとして形にあらわし、本尊として礼拝するためといえる。それらを前にして祈り、儀礼を捧げることにより、浄土や阿弥陀のイメージや、称名念仏の教えなどがより具体的なものとして、人びとのなかに刻印される。このように『法然上人絵伝』には、宗教的実践において絵画や造形物がどのように用いられているのか読み取れる場面――メタ表現――が多く見いだされ、イメージへの礼拝の意義が積極的に認められる。日々の実践においてイメージがひろく活用されていたことが理解される。
以上のことから、ゾイゼや法然の霊性生活において絵画や造形物が儀礼という実践でパフォーマティヴィティをもつということが明確となった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ハインリヒ・ゾイゼと法然という宗教文化の異なる人物の著作や伝記絵巻を解読することにより、神託や幻視・ヴィジョンにおける、超越的存在と人間とのあいだのメディアの二方向の構造、夢についての解釈に見られる象徴性などを比較考察することができた。その際、個人的な祈りの際に用いられる画像や彫像――祈念像(Andachtsbild)――の存在も大きく関係することが明らかとなった。
また、とくに「法然上人絵伝」などの臨終のときの図像を解釈することにより、仏像、仏画をまつっての臨終行儀によって、このような浄土への往生のヴィジョンがもたらされることも明確になった。
以上のように、ゾイゼの『範典』写本や『法然上人絵伝』の図像を分析し、すでに構築した「幻視と夢の図像学」の三類型を精緻化した。さらに聖の顕現が祈祷やミサ、儀礼を行っているときに経験されることが多いことに注目し、祈祷図、儀礼図も比較検討して「聖なるものの顕現の図像学」へ統括できるような構想も得ることができた。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、造形物などが聖なるものの顕現をもたらすことをテクストおよび画像資料から考察する。とくに聖なるもの、神や超越者などとそれに応答する側との関係をより明確化するため、祈祷図、礼拝図、儀礼図を分析する。キリスト教のほか、仏教などの絵画も分析し、祈祷や念仏などを通して聖の顕現が生じている図像を比較考察する。認知心理学、文化人類学などの方法も援用する。
東京復活大聖堂(ニコライ堂)をはじめとして、日本各地にある東方教会典礼の調査を実施する。その際、イコン、イコノスタシスなども観察し、図像、造形物と儀礼と教会空間の関係を分析する。儀礼のパフォーマティヴィティ(行為遂行性)についてより精緻に分析する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

ハインリヒ・ゾイゼと法然のヴィジョンやヒエロファニーの体験についての論文を執筆し、聖なるものの顕現に関する資料として、旧約聖書の幻視、「ヨハネ黙示録」、聖人伝(アッシジのフランチェスコ、聖グレゴリウスのミサ)などの文書資料を分析する時間的余裕がなかった。そのための文献資料をそろえることができず、未使用額が生じた。
上記の資料をそろえ、また資料調査のための旅費を支出する予定である。さらに、研究者どうしでの情報交換を活発にするため、研究会やワークショップなどに参加する計画であり、そのための旅費として使用する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2014 2013 Other

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results) Book (3 results)

  • [Journal Article] 「ハインリヒ・ゾイゼの『範典』写本における永遠の知恵」2013

    • Author(s)
      細田あや子
    • Journal Title

      『比較宗教思想研究』

      Volume: 13 Pages: 63-99

  • [Presentation] 「宗教芸術のパフォーマティヴィティ」

    • Author(s)
      細田あや子
    • Organizer
      日本宗教学会
    • Place of Presentation
      國學院大學
  • [Book] 『世界の宗教といかに向き合うか』2014

    • Author(s)
      市川裕、細田あや子ほか
    • Total Pages
      325
    • Publisher
      聖公会出版
  • [Book] 『感性学-触れ合う心・感じる身体』2014

    • Author(s)
      栗原隆、細田あや子ほか
    • Total Pages
      312
    • Publisher
      東北大学出版会
  • [Book] 『感情と表象の生まれるところ』2013

    • Author(s)
      栗原隆、細田あや子ほか
    • Total Pages
      234
    • Publisher
      ナカニシヤ出版

URL: 

Published: 2015-05-28  

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