2015 Fiscal Year Annual Research Report
「聖なるものの顕現」における図像・造形物・言葉の働き-画像資料と儀礼から-
Project/Area Number |
25370069
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
細田 あや子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00323949)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 儀礼 / 神の像・イメージ / 口洗いと口開け / 通過儀礼 / ファン・ヘネップ / 生動化 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代メソポタミアのミース・ピー(口洗い)およびピート・ピー(口開け)とよばれる宗教儀礼の文書を解読し、神像から神への変容、聖なるものの顕現のメカニズムを分析した。この儀礼は、新しく神像が制作されたとき、あるいは破損した神像を修復する際、神像の口を洗い、口を開けるという所作を中心とした一連の儀礼である。洗う行為は浄化、聖化に結びつく。また口開けは、生きる力の開始を象徴する。儀礼は2日間にわたるが、とくに初日の深夜から2日目の朝にかけての庭での段階において、口洗いと口開けが繰り返し行われ、この儀礼に最も特徴的なことがらが展開されていることが明らかとなった。そして神像から神への変容過程にあたり、ファン・ヘネップが理論づけた「通過儀礼」の特徴も見出せることが明確になった。 3年間の研究では、最初の2年で画像資料、3年目には文書資料の分析により、聖なるものの顕現を多角的に考察した。キリスト教美術の図像解釈や、古代メソポタミアの文書解読をとおし、儀礼で行われる犠牲や捧げ物、さまざまな所作、祈りの言葉などが総合されて、聖なるものが顕現するしくみを検討した。今後は造形物の生動化というしくみについて、画像や文書からさらに考察してゆく。また、分離、過渡、統合の段階を経る通過儀礼の観点についても、より詳しく検討し、どのような段階をとおして聖なる顕現が生じるのか、さまざまな事例にもとづき考察する必要がある。
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