2013 Fiscal Year Research-status Report
自然神学の言語論的転回とその社会科学への拡張─聖書・環境・経済─
Project/Area Number |
25370070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芦名 定道 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201890)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キリスト教環境論 / 政治神学 / 経済神学 / 聖書解釈 / 韓国キリスト教 |
Research Abstract |
平成25年度は研究計画の初年度して、具体的な研究実施に向けた体制固めを行った。というのも、本研究は、現代の思想的状況におけるキリスト教思想の多様な動向を視野に入れつつ、社会科学(とくに、経済学と政治学)との関連で自然神学を再構築することを目的としており、それに関連する研究領域は広範囲に及ぶ。そのため、研究を実施するには、研究の方向性と目的を明確化し、計画と方法とについて再度検討を行うことが必要だからである。 25年度は、次の点を中心に研究が進められた。一つは、自然神学自体の最新の問題状況の確認であり、「科学技術とキリスト教」、「脳神経科学とキリスト教思想」という問題について、集中的に研究を行い、4つの学術論文を執筆した(2論文はすでに刊行、もう一つは本年前期に刊行予定)。もう一つは、東アジアのキリスト教における研究状況の調査であるが、日本国内については、いくつかの研究機関を訪問し研究者と討論を行い、また国外については、研究協力者(方俊植氏)による韓国ソウルでの調査を実施した。25年度の韓国ソウルでの調査は、26年度以降の本格的な調査の予備調査という性格のものであったが、調査内容は、「韓国の社会的な状況と民衆神学の可能性」という報告書にまとめられた。 また、自然神学の社会科学への拡張に関しては、京都大学キリスト教学専修の特殊講義で、聖書解釈を基盤にした経済に関連したキリスト教思想の検討を行った。これによって、聖書解釈に基づく自然神学の社会科学への拡張という本研究の中心テーマを具体的に展開する見通しを立てることができた。 その他に、本研究計画についてのブログによる発信や、研究文献の収集も計画通り進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究申請時に予定していた研究計画にそって、ほぼ予定通り研究が実施されており、おおむね順調な進展状況と言える。関係学会や関係研究会での口頭発表、論文執筆などの場を適切に利用し、研究を進めることができたことを、順調な進展の理由として上げることが出来る。また、研究代表が所属する京都大学での授業(特殊講義)と本研究とを有機的に結びつけたことも、研究の実施にとってプラスに働いた。 なお、海外における研究調査も、26年度からの本格実施に向けて、予備調査を実施することができ、研究計画初年度としては、全体として順調な滑り出しと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度も25年度に実施された研究を継続する形で研究が進められる。たとえば、海外の研究調査として、25年度のソウルでの予備調査は、ソウルでの本格的な調査の実施として展開される。そのために、研究協力者との共同で、調査を具体的に進めたいと考えている。また、国内の研究調査も、実施場所を適宜拡張しつつ継続的に進められる。 しかし、いくつかの点で、25年度とは実施テーマを入れ替えることも考えられる。25年度は自然神学の社会科学への拡張について、自然神学自体と経済神学が主要なテーマとして設定されたが、26年度は、政治神学・政治哲学に中心を移し社会科学への拡張を検討する予定である。聖書思想における政治神学の展開を、その方法論に焦点を合わせて検討することにより、自然神学の拡張についての議論をさらに深めることが期待できる。
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